【12月12日 AFP】フランスのエドゥアール・フィリップ(Edouard Philippe)首相は11日、反発を生んでいる年金制度改革案の詳細を公表した。同案をめぐりストライキを実施している労働組合側への譲歩を示す内容だったが、労組側はこの内容に満足せず、ストライキを拡大すると宣言。懐柔は失敗に終わった。

 首都パリなど主要都市では5日からストライキが続き、1週間にわたり公共交通網がまひ。商店やホテル、飲食店の間では経済的な影響に対する懸念が広がっている。

 フィリップ首相はテレビ演説で、改革は「酷な形にならない」よう段階的に実施され、1975年より前に生まれた労働者は除外されると説明。また、規定の就労年数に達したすべての人に最低で月1000ユーロ(約12万円)の年金が保証されると述べた。

 これは農業従事者など一部の人が現在受け取っているよりも多い金額。一方、公式統計によれば、2017年の平均年金支給額は1600ユーロ(約19万円)余りだった。

 さらに首相は、法律上の定年を62歳に据え置きつつも、賞罰により64歳まで働くことを促す方針を宣言。これには多くの人が反発した。また、定年が一般よりも早い鉄道員、船員、オペラ座(Paris Opera)従業員などの特定部門に対する特例年金を廃止する方針を維持したことにも、不満の声が上がった。

 首相は改革案がストライキ終了を「正当化」するものだとしているが、フランス国鉄(SNCF)の労組は、発表を受けてストライキの「強化」を呼び掛けた。また、フランスの三大労組連盟はいずれも同案を批判。ここ1週間で2度ストライキを行った教師らも、同案に不満を示している。

 年金改革案をめぐっては、今月5日のストライキ開始以降に行われたデモに数十万人が参加。エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領が公共支出削減と経済の競争力向上を公約に掲げて2017年に就任して以降、労組の力を示す行動として最大の規模に発展している。(c)AFP/Mariette Le Roux