【1月3日 AFP】人間は太古の昔から石を積み重ねてきたが、石を「浮かび上がらせる」ことに力を注ぐ男性がいる。アーティストのSP・ランザ(SP Ranza)さん(33)だ。SP・ランザさんは「石のバランス」の達人で、2019年4月、英スコットランド東部ダンバー(Dunbar)で開催された「欧州石積み選手権(Europian Stone Stacking Championships)」で総合優勝した。

 元溶接工のSP・ランザさんはある日、インターネットでこの芸術に出会った。「魔法のようだと思い、夢中になった。もっと上手になりたくて、半年間毎日、川で一人で練習した」

 SP・ランザさんは、精神の安らぎと健康的な生活を求め瞑想(めいそう)をするが、石を重ねる際も瞑想と似たような状態で「完璧なバランス」を求めるという。

「選手権に興味があったわけではない」。選手権には、賞品を勝ち取るために参加した。2020年3月に米テキサス州で開催される、バランスや芸術性などを競う大会「ラーノ・アース・アート・フェスティバル(Llano Earth Art Festival)」への参加旅行が賞品だったのだ。

 器用さに恵まれたSP・ランザさんは、自然の中を散策しながら石やものを慎重に選ぶ。物理学や力と抵抗の概念に臆せず、自身の芸術の中に「単純な論理」を見いだしているのだという。

 一方で、石を積む際には、技術の向上や接触面積の最小化も追求している。作業は骨の折れるもので、極度の集中力を要するという。

「構造全体を安定させる最後の石を置く。この決定的な瞬間に、私は完全に静止していて、手だけが10分の数ミリ動く」

 SP・ランザさんは作品の写真を販売することで、生計を立てている。一つの作品を制作するのに丸1日かかることもあるという。(c)AFP