【12月10日 AFP】インド下院は10日未明、同国で少数派とされる宗教を信仰する近隣諸国出身者のうちイスラム教徒以外に市民権を付与する法案を可決した。物議を醸している同法案をめぐっては議会で激しい論争が繰り広げられた。同国北東部の各地では抗議行動も起きている。

 この市民権改正法案は、イスラム教徒が多数を占めるアフガニスタンやバングラデシュ、パキスタンでの迫害から逃れてきたヒンズー教徒やシーク教徒、仏教徒、ジャイナ教徒、ゾロアスター教徒がインドの市民権を獲得できるようにするもの。午前0時を回った直後に下院で採決が行われ、賛成311、反対80で可決された。

 ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相はツイッター(Twitter)で、「この法案はインドで何世紀も続く同化の精神や人道的価値観への信念と一致するものだ」と述べ、法案可決に喜びをあらわにした。

 一方、イスラム教団体や人権団体などは同法案について、インドに2億人いるイスラム教徒を排除しようとするモディ首相の圧力の一環とみているが、モディ政権はこの見方を否定している。

 9日にはインド国内外の機関に所属する専門家や学者100人が、同法案に「遺憾」を示す共同書簡を発表。インド憲法がすべての宗教の信者を平等に扱うことを求めている点を挙げ、同法案は「憲法の基本構造と矛盾する」と指摘した。

 同法案は第1期モディ政権で議会通過が目指されたが、このときは上院でモディ首相率いるインド人民党(BJP)と与党連合が過半数を占めていなかったため否決された。だが、BJPは現在、4~5月の総選挙で圧勝したことで両院での法案通過に自信を持っている。(c)AFP/Glenda KWEK