【12月10日 AFP】気候変動による異常気象が同時に複数の穀倉地帯を襲うと、世界の食糧供給が脅かされると警告する研究結果が9日、英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)で発表された。

 気候は重要な不確定要素だが、ある地域で穀物が不作だった場合、通常は別の地域の生産によって収量低下分が補われている。また、短期的な混乱には備蓄や貿易で対応している。だが、論文によると「現在の仕組みが、これまで以上の異常気象に耐えられるかは疑わしい」という。

 オーストリアを拠点とする国際応用システム分析研究所(IIASA)の研究チームは、気候変動は気温を上昇させるだけではなく、干ばつ、熱波、洪水など深刻な異常気象をこれまで以上に発生させていると指摘する。

 論文の筆頭執筆者であるIIASAのフランツィスカ・ガウプ(Franziska Gaupp)氏は、気候が農業生産に打撃を与えると、食糧価格の急騰や飢饉(ききん)が発生し、政情不安や移住など他のシステムにまで危険が及ぶ可能性があると指摘する。

 1967~2012年の気候と穀物生産量のデータは、特にコムギ、トウモロコシ、ダイズについて、世界の複数の穀倉地帯で不作が同時に発生する確率が著しく増加していることを示している。

 ダイズ生産において最大規模の収量低下が発生したのは1988~89年で、低下量は720万トンに上った。一方、主要な穀倉地帯全域が打撃を受けた場合、その収量低下量は1255万トンを超えると、論文は指摘している。

 さらに、ネイチャー・クライメート・チェンジ誌に同時掲載された関連論文は、世界の食糧生産の最大4分の1を占める北米西部、欧州西部、ロシア西部、ウクライナで、ジェット気流の変化によって熱波が発生する危険性が急速に高まっていると警告している。

 独ポツダム気候影響研究所(PIK)の客員研究員カイ・コルンフーバー(Kai Kornhuber)氏は、「今回の研究では、食糧システムにおける脆弱(ぜいじゃく)性を発見した。世界規模で風のパターンが固定化されると、世界の主要穀倉地帯で熱波が同時発生する危険性が20倍となる」と説明している。

 また、共著者であるPIKのジョナサン・ドンジュ(Jonathan Donges)氏は「今後、異なる地域で同時に熱波が発生する頻度が増えるだけではなく、熱波の深刻さもはるかに増す」と指摘した。

「熱波の影響を直接的に受ける地域で食糧不足となるだけではなく、遠く離れた地域も食糧不足と価格高騰に見舞われる恐れがある」 (c)AFP