【12月6日 AFP】5日、労働組合が無期限の全国ストライキに突入したフランス・パリのサンラザール(Saint-Lazare)駅は閑散としていた。市南部の食品卸売市場で夜勤仕事を終えたクアクさん(50)は、疲れ切った足取りで出発時刻表示板を確認しに行く。職場からパリ郊外の自宅まで、通勤時間は本来15分程度。だが、この日は退勤から1時間半が過ぎてもまだ帰宅できずにいた。

 それでも、公務員と民間企業との格差をなくすべく年金の一本化を目指すエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領の計画に抗議して、現行制度で優遇されている公共交通機関の職員たちが一斉ストに踏み切ったことへの非難は口にしない。「何かを勝ち取るためには、デモも必要だ」とクアクさん。「個人的には迷惑だけどね」

 パリでは地下鉄、バス、路面電車がほとんど運休し、通勤者の多くはストの混乱を避けて在宅勤務を選ぶなどした。小学校教員の50%以上と中学校教員の42%もストに参加したため、多くの学校で休校措置がとられ、保護者も在宅を強いられたりベビーシッターの手配に追われたりした。

 市内の通りは目立って静かな一日となり、車の流れは普段より快適なほど。ストをものともせず、自転車や電動キックスケーター、徒歩などで目的地に向かう強者(つわもの)たちの姿も見られた。

 今回のストを商機ととらえ、代替交通手段をアピールする企業もある。「バラ色の眼鏡でストを見てみよう!」──仏配車サービス「Heetch」は、鉄道駅前に大きなピンク色の広告を掲げた。

 繁華街オペラ(Opera)地区では大半の店が営業していたが、店員数は少なめで、それでも多忙ではなさそうな様子。観光地もエッフェル塔(Eiffel Tower)やオルセー美術館(Musee d'Orsay)は人員不足で休館、ルーブル美術館(Louvre Museum)やポンピドーセンター(Pompidou Centre)も一部が閉鎖となり、観光客をがっかりさせた。

 カナダから来た観光客のリサさんは、何よりも警官の多さに驚いたという。市内各所では約6000人の警官が、5日午後のデモが暴徒化した場合に備えていた。労働組合の主導するデモには「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト、gilets jaunes)」運動の過激な支持者が加わって暴徒化する傾向があるためだ。「こんなの、カナダでは見たことない」とリサさんは語った。(c)AFP/Clare BYRNE