【12月6日 AFP】人間を含む現代の哺乳類が鋭い聴覚を持っているのは、中耳内に微小な3個の骨、耳小骨(じしょうこつ)があるおかげだ。哺乳類の祖先には耳小骨がないが、この変化がいつの時点で起きたかは不明のままだった。

 この遷移段階を、現在の中国北東部にあたる地域に1億2500万年前に生息していた新発見の原始哺乳類の化石で確認したとする論文が、5日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。今回の研究成果について、研究者らは古生物学分野における画期的な節目として歓迎している。

 爬虫(はちゅう)類は顎を、物をかむためと、外の音を振動を通して脳に伝えるための両方に使っている。哺乳類の聴覚系はこれに比べてより精巧で複雑で、ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の3個の骨が関与して人間の音楽鑑賞からイルカのエコーロケーション(反響定位)までのあらゆる音を処理する。

 聴覚系と咀嚼(そしゃく)系の「分離」によって、それぞれの系が互いに対して課していた身体的制約が取り除かれた結果、哺乳類は食性の多様化と聴覚の向上の両方を実現できたと、科学者らは仮説を立てている。

 論文の主執筆者で、アメリカ自然史博物館(American Museum of Natural History)のジン・メン(Jin Meng)氏は、今回の研究は白亜紀初期に生息していた原始哺乳類6個体の化石に基づいていると説明。中国主導の研究チームが「Origolestes lii」と命名したこの動物は恐竜と共存し、大きさと外見が齧歯(げっし)動物に近かったという。

 研究チームは今回、高解像度CTスキャンや他の画像化技術を利用して保存状態の良い化石標本を調査し、聴覚に関与する骨と軟骨の構造などを含む細部の特徴を明らかにすることに成功した。その結果、より初期の種では骨と骨の接触がみられないことが分かった。

「今回の研究では、仮説に同調する進化時期の化石証拠を提供できた」と、メン氏は話している。(c)AFP