【12月6日 東方新報】中国・北京で11月21日に開催された「2019年ニューエコノミーフォーラム」に中国の「古い友人」ヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)元国務長官が登壇した。御年96歳、つえを突きながらもかくしゃくとして、米中関係40年の生き証人として米中の大局観を語り、「必要なのは対話であり、対抗ではない」と強く訴えた。

 キッシンジャー氏は、リチャード・ニクソン(Richard Nixon)元大統領の政権時代に国家安全保障問題担当補佐官を務め、1971年7月9日から11日に北京を極秘訪問。この極秘訪問がニクソン大統領の電撃訪中、米中首脳会談につながり、米中国交正常化への道を切り開いた。当時、1971年7月16日付の人民日報(People's Daily)の一面の右下隅にわずか180字足らずで書かれたキッシンジャー氏訪中のニュースは世界を震撼(しんかん)させた。以来、キッシンジャー氏は100回近く訪中しており、そのたび中国の新聞、テレビメディアで大きく取り上げられてきた。

 フォーラムで、キッシンジャー氏は「米中は世界の最大の二つの経済体であり、お互いが『足をひっぱりあう』のは正常だ」としながらも、米中通商協議においては「両国に必要なのは対話であって、対抗ではない」との態度を明確にした。

 また、中国脅威論については「中国が強大な視点で出した発展戦略であって、それは脅威とはいえない」とし、米国が中国を恐れるあまり、「トゥキディデスのわな(戦争が不可避な緊張)」に陥りかけていると警告。中国を脅威とするあまり、中国に対するけん制のために、米中関係を断っていこうとするのは現実的ではないとした。目下の米中関係については、「米中両国関係は、双方の共同利益のために対立点を正確に見て、対話と協力を強化し、ネガティブな影響を低く抑える努力をしなくてはならない。もし米中が非常に敵対すれば、想像のつかない結果をもたらす」と懸念を示した。

 キッシンジャー氏は翌日の22日、中国の王毅(Wang Yi)外相(国務委員)と会談。王毅氏は「キッシンジャー博士は米中関係の先行者であり開拓者だ」「永遠の中国の親友であり古い友人だ」と称賛。「米中国交正常化40年後の今、その関係は再度、新たな選択に迫られている。米国国内の一部の政治家は腹の中でいろいろ考えて中国のイメージを真っ黒にするために攻撃し、さらには全世界で反中をあおって火をつけまわり、両国関係の発展方向を変えようと試み、対立を推進し、対抗させようとしている。これは米国の利益にも中国の利益にもならず、時代の潮流に逆らい、歴史に逆行するものだ」と訴えた。

 米中関係は貿易戦争、香港問題、南シナ海・台湾問題、ウイグル問題といくつもの対立点を抱え、国交正常化以来、最も厳しい局面を迎えている。およそ半世紀近く前、劇的に米中関係を転換させた「外交の魔術師」のメッセージは果たして米中の指導者たちに届くだろうか。(c)東方新報/AFPBB News