■価値観の違い

 メイさんは婚約者と8年間付き合ってきたが、最近まで警官という職業が争いのもとになることはなかったという。

 友人らは、メイさんたちから距離を置くようになった。メイさんは親友とけんかしたことに今もショックを受けている。それは、婚約者とウエディングドレスを見に行った後のことだった。親友に「あなたはまだ結婚したわけじゃない。まだ選べる」と言われたのだ。

 親友はさらに「彼は警察のこの不当な行為を見て、それでも警察は何も間違ったことをしていないと思っているではないか。そんなに価値観の違う人間と一緒になるつもり?」とメイさんを問い詰めたのだった。

 いつも平和的な参加者としてデモに加わってきたメイさんは、警察の暴力を直接見たことはない。機動隊の最前線で働く自分の未来の夫が誰かを傷つけるなんて信じられない。

 婚約者は政治だけではなく、メイさんがデモに参加することにも関心がないとメイさんは言う。だが、彼の友人たちはメイさんの政治観を批判し「狂っている」とさえ言う。

■「あなたが辞めるか、私が去るか」

 友人たちに反対される前から、すでにメイさんの結婚式は問題にぶつかっていた。式の招待状の印刷を頼んだ業者が、警官の結婚式をすべてボイコットすることにしたブライダル業者の一つだったのだ。

 警官の結婚式はデモ隊の標的ともなっている。そして結婚式を妨害しようとする人々に、警官隊は催涙弾やゴム弾を発射する。

 周囲からの圧力がどんどん強まり、メイさんはついに数週間前、婚約者に「あなたが(仕事を)辞めるか、私があなたから去るかだ」と、最後通告を突きつけた。しかし、彼にとって転職が難しいのは分かっている。メイさんはまだ彼の元を去っていない。

 メイさんは、結婚式をするかどうかは保留にしているが、もしかしたらキャンセルしてしまうかもしれない。「彼とは付き合いを続けると思う」と静かにメイさんは言う。「確実には言えないけれど、彼の元にとどまりたいと思っている」 (c)AFP/Yan ZHAO