【12月10日 東方新報】中国の古くて新しい問題「悪意ある商標登録」の取り締まりを推進するために、改正商標法が11月1日から施行された。11月25日に国家知財権局が記者会見で発表したところによると、知財権侵害の賠償制度が整備され、法廷賠償額が最高500万元(約7700万円)にまで引き上げられ、賠償額も、損失の3倍以下から5倍以下に引き上げられた。

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 有名企業名やそれによく似た名称を勝手に商標登録し、その有名企業のイメージを損ない、違法に利益を得たりしようとたくらむ「悪意ある商標登録」の問題は、中国市場ではかなり深刻化している。2017年の商標権侵害、ニセ商標登録件数は2万7000件で、被害額は約3億3300万元(約51億3000万円)に上るという。

 商標権がいったん登録されて5年が経過すると、よほどの有名ブランドでない限り、その権利を取り消させることは相当困難となる。その場合、訴訟となるが、時間がかかる上、商標権の無効化を勝ち取る確率は五分五分なため、「ならば、その商標権を登録した企業から買い取った方が早い」となる。

 このように、登録する企業の目的は、企業に商標権を高額で買い戻させて違法利益を得ることだ。商標登録にかかる費用は1000元(約1万5000円)程度だが、登録商標を本家に売り渡せば数十万元から100万元(約1540万円)以上の値がつくのだ。

 このほかにも、例えば中国大手Eコマース企業集団の阿里巴巴集団(アリババグループ・ホールディング、Alibaba Group Holding)によく似た「アリジジ(阿里爺爺)」など「アリ―」といった商標も、アリババの市場イメージを損なったり、消費者をだましたりするなど違法な目的を伴う。

 12月1日からは「商標登録申請行為の規範に関する若干の規定」も正式に施行される。この規定に従えば、3年連続で商標を正当な理由で使用しないなど、使用目的で登録したと思われないものは、いかなる個人、企業も商標登録取り消し申請を行うことができるという。

 中国の悪意ある商標権登録の被害は、海外企業にも及んでいる。日本のブリヂストン(Bridgestone)に類似した「フリジストン」の商標を登録してタイヤを生産・販売した水滸タイヤについては、ブリヂストン側が2018年6月に商標侵害行為として提訴。このほどブリヂストン側の勝訴が確定し、損害賠償330万元(約5100万円)の支払いが命じられた。

 こうした一連の法整備のおかげで、中国の悩ましい商標権侵害問題が大きく改善され、中国市場の公平な企業競争環境が整っていくと期待されている。(c)東方新報/AFPBB News