■第3の波

 今回の香港の人々の海外移住は、1997年の英国から中国への返還前、2014年の民主化デモ「雨傘運動(Umbrella Movement)」の失敗後に続く移住の「第3の波」ともいわれている。

 会社員のスキ・ルイ(Suki Lui)さん(37)は定期的に民主化デモに参加しているが、2歳の娘の将来を考え台湾への移住を計画している。「娘にはよりよい教育を受けさせたい。自由を楽しみ、夢を実現させてほしいし、(中略)選択肢と希望を持てる都市に住んでほしい」

■台湾にも迫る中国の脅威

 しかし、台湾へ移住したとしても、中国の脅威にさらされることに変わりない。

 中国政府は台湾を自国の領土の一部だと主張しており、台湾に過去70年も独自の政権があるにもかかわらず、必要とあらば武力を行使してでも台湾を統一するとしている。

 2016年に台湾総統に就任した蔡英文(Tsai Ing-Wen)氏は、「一つの中国」を否定しており、香港民主派への支持を繰り返し表明している。これに対し中国は、台湾に対する経済的・軍事的圧力を強化している他、台湾と外交関係を結んでいる数少ない国々に中国と外交関係を結ぶよう働きかけ、横取りしている。

 台湾では来年1月、総統選挙が実施される。蔡氏はこの選挙を「自由と民主主義のための闘い」と位置付けている。一方、蔡氏の対立候補は中国に対し融和路線を打ち出している。

 香港から台湾に移住した人々は、香港の教訓を心にとどめておいてほしいと話す。「私はまだ投票できないが、台湾を守れる人に投票してほしい」とチョウさんは話す。

 9月に台湾へ移住したフェニックス・ロウ(Phoenix Law)さん(30)は、台湾の自由に引かれてやって来た。「(台湾の)人々は香港の現状を見て警戒感を抱いてほしい。中国共産党を信じてはいけない。彼らの言葉は、聞こえはいいが全部うそだ」 (c)AFP/Amber Wang, with Yan Zhao in Hong Kong