【12月3日 AFP】デンマーク領グリーンランド(Greenland)の氷床上の急速なひび割れと表面湖の排水をドローン(無人機)を用いて観察した研究結果が2日、発表された。こうした現象は、気候変動の影響で発生頻度が上昇する可能性があるという。

 一般的に約1キロの厚みがある氷床は夏の間、表面の一部が融解して多数の湖が形成されるのが通常だ。

 表面湖の多くはほんの数時間以内に水が抜け、氷の底部に広大な割れ目ができる。その深さは最大で1キロに達する。氷床の表面を流れる融解水は、融解シーズンの残りの間中この割れ目に流れ落ち続け、世界最大級の滝を形成する。

 この過程を直接観察するのはこれまで極めて困難だった。だが、英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)スコット極地研究所(Scott Polar Research Institute)の氷河学者チームは2018年7月、グリーンランド北西部にあるストア氷河(Store Glacier)で、その観察に成功した。

 氷河到着から数日後、表面湖の3分の2の約500万リットルの水が5時間のうちに、氷床表面から割れ目を通じて消失した。

 研究チームがドローンで撮影したこの前後の空撮画像には、ダークブルーの楕円(だえん)形が縮小し、小さくて浅いライトブルーの円になる様子が捉えられている。

 米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文の共同筆頭執筆者のトム・チャドリー(Tom Chudley)氏は、AFPの取材に「ドローンの使用によって、氷上の科学者らが接近するには安全でない領域で、このような上質の測定データを得ることが可能になる」と語った。

 ドローンに搭載のGPS(全地球測位システム)機能を利用して、研究チームは撮影した多数の画像の位置情報を取得し、画像をつなぎ合わせることができた。次にこの画像データを用いて、氷床表面の詳細な立体再現モデルを作製した。