【12月2日 時事通信社】大規模な反政府デモが続くイラクで1日、アブドルマハディ首相が責任を取る形で辞任した。ただ、当初は汚職撲滅や生活改善を掲げたデモ隊は、今では政治体制の刷新を要求。「首相辞任だけでは不十分」と訴える声も出ており、混乱が収拾に向かうかは見通せない。

 10月初旬から始まった反政府デモでは、実弾も使用して排除を試みる治安部隊と、市民が激しく衝突し、死者は既に420人を超えた。アブドルマハディ氏が辞意を表明した11月29日以降も、イスラム教シーア派聖地ナジャフで聖廟(びょう)の一部が放火され、デモの暴徒化に歯止めがかからない状況だ。

 イラクでは昨年5月の総選挙で、シーア派指導者サドル師の政党連合が議会第1勢力に躍進した。しかし、その後の連立協議は難航。各勢力が妥協した結果、副大統領などを歴任したシーア派のアブドルマハディ氏が首相に就いたのは、同10月だった。今後も後任の首相の人選で駆け引きが予想され、政情の安定には程遠い。

 アブドルマハディ氏はかねて、イラクの政治や経済に影響力を持つ隣国イランとの緊密な関係で知られていた。このため、就任後はイランの介入が強まり、「政府はイランの命令で動いている」(首都バグダッドの住民)と急速に不満が高まった。シーア派聖地カルバラやナジャフでは11月、デモ隊が「イランは去れ」などと気勢を上げ、イラン領事館が相次いで襲われた。ナジャフでは1日にも領事館が放火されている。

 事態が泥沼化する中、イラン革命防衛隊で対外工作を担う「コッズ部隊」のソレイマニ司令官が11月下旬にバグダッド入りしたとも伝えられる。新政府の顔触れにイランの意向が強く反映されることになれば、デモ隊の反イラン感情は一段と増幅されそうだ。(c)時事通信社