【1月11日 AFP】アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)の砂漠の真ん中に、ノルウェーの環境を再現した養殖場がある。外は焼けつくような暑さだが、何千匹ものサケが水槽に張られた冷たい水の中を泳いでいる。

 ドバイはこれまでも、ヤシの木の形をした人工島やショッピングモール内の本格的なスキー場など野心的プロジェクトに挑戦してきた。

 だが、砂漠でのサケ養殖は「誰も想像しなかった」と、フィッシュファーム(Fish Farm)社の最高経営責任者(CEO)バデル・ビン・ムバラク(Bader bin Mubarak)氏は話す。

 養殖場にある四つの大きな水槽は、水流や温度の調整が可能で、サケの飼育に最適な環境に保たれている。日の出や日没、潮の満ち引き、激流、川のせせらぎ、浅瀬なども再現しているという。

 数々の野心的プロジェクトに挑戦してきたドバイでも、サケの養殖場建設は困難を極めた。サケは通常、アイスランド、ノルウェー、スコットランド、アラスカなどの冷たい水に生息している。だが、ドバイでは気温が45度に達することもある。「最も困難だったのは、サケにとって(正しい)環境をつくり出すことだった」とムバラク氏は語った。

■水産物の国内生産増加が目的

 フィッシュファームは、英スコットランドからサケの稚魚約4万匹、アイスランドから卵数千個を輸入し、ドバイ南部ジュベルアリ(Jebel Ali)にある養殖場で飼育している。サケは川で生まれ、海で一生の大半を過ごし、再び川に戻って産卵する。だが、フィッシュファームの養殖場の水槽は、ろ過された清潔な水で満たされている。

 同社は2013年、ドバイのハムダン・ビン・ムハンマド・ビン・ラシド皇太子(Hamdan bin Mohammed bin Rashid)の支援を受け設立された。現在、毎月1万~1万5000匹のサケを生産している。すしネタに使われるブリなどの魚も養殖しているが主力商品はサケで、国内各地に流通している。

「UAEは魚の約92%を輸入している。食料安全保障上の観点から、輸出に代わり国内需要を賄えるようになることが目標だ」とムバラク氏は話す。

 ドバイ商工会議所(DCCI)によると、UAEの2017年の水産物の輸入額は23億ディルハム(約690億円)、輸出額は2億8000万ディルハム(約83億円)だった。

 ムバラク氏は、今後2年以内に少なくとも国内需要の50%を、UAE唯一の養殖業者であるフィッシュファームによって満たしたいと述べている。(c)AFP/Shatha YAISH