【12月2日 AFP】ベルギー首都ブリュッセル近郊のアールスト(Aalst)の市長は1日、ユダヤ人団体や欧州連合(EU)からの反発を受けて、同市で毎年恒例のカーニバルを国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の無形文化遺産(Intangible Cultural Heritage of Humanity)の登録から取り下げると発表した。

 今年3月、かぎ鼻の正統派ユダヤ教徒の人形と、金袋の上に乗るネズミを描いた故意的な反ユダヤ主義の山車がカーニバルに登場したことを、アールストのクリストフ・ダーゼ(Christoph D'Haese)市長が擁護。これを受けて論争が巻き起こっていた。

 規則や制限のないユーモアと挑発のセンスを誇りとするこのカーニバルは、2010年にユネスコの無形文化遺産に登録された。キリスト教の四旬節(Lent)の始まり「灰の水曜日(Ash Wednesday)」直前の3日間にわたり開催され、毎年大勢の観客が訪れていた。

 ダーゼ市長は1日、ユネスコとの協議で妥協案を見つけることができず、今月中にユネスコがカーニバルの世界遺産登録を抹消するとみて、登録を取り下げる決意を固めたと表明。

 同国のベルガ(Belga)通信によると、ダーゼ市長はメディア宛ての声明で、「アールスト市民はグロテスクな非難に苦しんできた」とし、「われわれは反ユダヤ主義者でも人種差別主義者でもない。こうした主義を支持するすべての者は、悪意を持って行動している。アールストはこれからも常に、風刺の中心地であり続ける」と述べた。

 欧州ユダヤ教会(European Jewish Association)のラビ(ユダヤ教指導者)長を務めるマーゴリン(Margolin)師は、「多方面からの批判を受け、明らかにグロテスクな反ユダヤ主義の作品だったにもかかわらず、また、間違ったことや人を傷つけたことを少なくとも認める機会があったにもかかわらず、アールスト市長は一貫して反抗的な態度で、あざ笑っていた」と非難した。

 ユネスコは3月に「こうした事態に対して慎重な姿勢を取り、妥協はしない」と表明しており、今月12日の会議でこのカーニバルの登録が抹消される可能性が高まっていた。(c)AFP