■世界のCli-fi作品

「気候のための青少年ストライキ(Youth Strike 4 Climate)」や「絶滅への反逆(Extinction Rebellion)」などのような世界規模の抗議運動によって、気候変動に対する一般市民の認識は高まっている。

「SFと気候変動:社会学的アプローチ(Science Fiction and Climate Change: Sociological Approach)」の共著者であるJ・R・バーグマン(J.R. Burgmann)氏にとってCli-fiの映画や小説とは、人々の知識が増え、社会的不安が高まっていることを論理的に表現したものだ。「現実世界に呼応して、このような不安が高まっている」

 気候変動は間違いなく世界規模の問題であり、Cli-fiも世界的に人気となっている。

 例えばフランスでは、気候変動によってもたらされるディストピアという将来あり得る出来事をテーマにした二つのテレビ番組が視聴者と批評家から高く評価されている。「The Last Wave(最後の波)」は悪天候で行方不明になった10人のサーファーの物語。「The Collapse(崩壊)」は燃料が枯渇し、核施設が脅かされ、医薬品が配給制となった世紀末後の世界が舞台となっている。

 世界のCli-fi作品としてはこの他、アイスランド作家シグリズル・ハガリン・ビョルンスドッティル(Sigridur Hagalin Bjornsdottir)氏の「Blackout Island(停電の島)」や、米作家ジーン・ヘグランド(Jean Hegland)氏の「森へ―少女ネルの日記(Into the Forest)」をカナダでドラマ化した「スイッチ・オフ(Into the Forest)」、米作家パオロ・バチガルピ(Paolo Bacigalupi)氏の「神の水(Water Knife)」などがある。

 さらにノルウェーの作家マヤ・ルンデ(Maja Lunde)氏は2017年のベストセラー「蜜蜂(The History of Bees)」で、殺虫剤によって地球上から昆虫がいなくなり、人間が手で作物の受粉をせざるを得なくなった世界を描いている。ルンデ氏は2018年、AFPの取材に「人々の気候変動に対する不安は募る一方だ。作家というものは、人々をおびえさせるものを書く」と語った。

■無視し難いテーマ

 気候変動に関する小説や映画は目新しいものではない。

 米作家ジョン・スタインベック(John Steinbeck)氏の「怒りの葡萄(The Grapes of Wrath)」は、基本的には米オクラホマ州のダストボウル(土地の荒廃により発生した砂嵐)から逃れてきた気候変動難民の悲惨な体験の物語だ。

 だが最近の相次ぐ干ばつ、森林火災、熱波などにより人々の認識が高まり、気候変動はテーマとして無視し難くなってきたと指摘するのは、Cli-fi小説の第一人者であるフランスのジャンマルク・リニー(Jean-Marc Ligny)氏だ。

「気候変動は物語を必要としており、読者も物語を必要としている」とリニー氏は言う。「数値や統計などもあるが、これらが実際に何かを語るわけではない。Cli-fiによって人々の現状に対する認識は深まる」 (c)AFP/Riwan MARHIC