■根本問題

 ブロディ村には子どもたちのはしゃぐ声が響き渡り、空き家が立ち並ぶ周辺のゴーストタウン化した村々とは対照的だ。チスチャコフ校長は、里親制度を大規模に活用したおかげだと話す。「学校があれば、村も存続できる」。また、国が孤児たちの世話をする人を支援しており、職を求めて村を離れる必要もないと指摘する。

 この制度がなければ子どもたちは国が運営する孤児院で暮らさなければならず、里親制度は子どもにとってもプラスだ。アルコール依存症の親に捨てられた子どもが多く、孤児院で暮らすと情緒的表現を表に出さなくなると、地元政府の教育担当者、イリーナ・クドリャフツェワ(Irina Kudryavtseva)氏は話す。

 ブロディ村の歴史教師エカテリーナ・ソロウィオワ(Ekaterina Solovyova)さん(52)とスポーツインストラクターの夫は、1998年以来11人の子どもを里子に迎えた。「私の誕生日には家が人であふれかえる」と、ソロウィオワさんは家族のアルバムを誇らしげにめくりながら言う。

 ソロウィオワさんは現在、17歳の子を筆頭にダーニャ君を含め里子3人と実子1人を育てている。大家族を持つことは一つの生き方であり、教師としての職を続けるための冷淡な策略ではないとソロウィオワさんは強調する。

 しかし、人口危機は改善されたものの、ブロディ村は若い世代の教師がいないという別の問題に直面している。この問題は、「仕事がなく、若者は村を去る」という根本問題に起因する。

 ソロウィオワさん一家も例外ではない。実子3人と里子7人は就職のため村を離れたという。(c)AFP/Marina KORENEVA