【11月29日 AFP】南米にある世界最大の熱帯雨林アマゾン(Amazon)の森林火災によってアンデス山脈(Andes)の氷河の融解が進み、数千万人が水不足に苦しむようになる恐れがあるとの研究結果が28日、英科学誌ネイチャー(Nature)の関連オンライン学術誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された。

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 アマゾン盆地では今年大規模な森林火災が発生し、地平線を煙が覆う写真が世界中で報じられて話題を呼んだ。

 今回の一連の火災は、農作物栽培や放牧を目的とした土地開墾など、人為的な要因で発生したものだ。だが、過去10年間で最悪のペースで進む熱帯雨林の破壊が、被害を拡大した。28日に発表されたブラジル政府統計(確報値)によると、2019年7月までの12か月間に破壊されたアマゾンの森林面積は前年比43%増となる1万100平方キロに達している。2008年以来最悪の規模だ。

 ブラジル・リオデジャネイロ州立大学(Rio de Janeiro State University)のニュートン・マガリャエス・ネト(Newton de Magalhaes Neto)氏のチームは、アマゾンの密林を焼く火災の煙がアンデス山脈の氷河に影響を及ぼしている可能性に着目。煙に含まれるすすが、卓越風に運ばれて数百キロ離れた場所で雪や氷の中に閉じ込められているのではないかとみて、研究を行った。

 森林火災が多く発生した2007~2010年について観察しモデル化したところ、すすを含んだ氷河の表面の色が黒ずむことで氷河の融解が加速する可能性が明らかになった。黒色炭素粒子を含んだ氷河の表面は、太陽光を反射する割合(アルベド)が低下し、融解量は最大14%増加するという。

 アンデス山脈の氷河を水源として頼る人々は7500万人以上。地域の農家は最たる例で、雪解け水は食料生産に不可欠な存在だ。氷河の融解が加速すれば、農耕期が短くなり、飲料水も足りなくなって、しまいには減りゆく天然資源をめぐって紛争が起きかねないと研究チームは指摘している。(c)AFP/Patrick GALEY