依存症治療の悲惨な現状 「恐怖の館」で浮き彫りに ナイジェリア
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【2月1日 AFP】ナイジェリアのミュージシャン、ジャグンラビさんは10年前、妻が家を出て行った日から不安を追い払うため薬物を始めた。そして抜け出せなくなった。
ジャグンラビさんは心臓発作に見舞われてから、薬物をやめなければと必死になっている。だが、誰に助けを求めればいいのか分からない。
ナイジェリアの経済の中心都市ラゴス(Lagos)の公園でAFPの取材に応じたジャグンラビさんは「どこに行けばいいのか分からない。ここの(リハビリ)センターは信頼できない」と語った。「あそこでは鎖につながれ、みだらなことをされかねない」
アフリカで最も人口が多いナイジェリアでは薬物がまん延しており、国連(UN)からは「流行」と称されるほどだ。だが、薬物依存症から回復したいと考える人が利用できる適切な治療はほぼ存在しない。
薬物まん延問題は、いわゆる「リハビリセンター」に対する一連の強制捜査で表面化した。これらの施設ではひどい環境下で、何百人もの成人男性と少年が鎖につながれ、虐待されていたのだった。
ナイジェリアではイスラム教の学校と銘打ったり、福音派教会として運営されたりしている野放し状態の施設が、薬物やアルコール中毒、精神疾患に苦しむ人々の回復を望む家族によって利用されている。
だが、そこで行われる「治療」は残酷だ。また、科学的に立証された医学的介入よりも祈りに力点が置かれている。
芸名だけを明かしたジャグンラビさんは、わずか2日前に家族が自分をある宗教施設に入れようとしたと話す。「一週間におよぶ祈りと断食…死んでしまう」
メディアが「恐怖の館」と名付けたリハビリセンターをめぐるスキャンダルは、当局にとって圧力となっている。
ムハマドゥ・ブハリ(Muhammadu Buhari)大統領は「責任ある民主的政府は、拷問部屋の存在を容認するものではない」と強調し、当局はこれら施設のうち悪質なものについては閉鎖を求めていると述べた。だが、施設に対する取り締まりは、功罪相半ばする結果となっている。