【12月7日 AFP】ベネズエラの首都カラカスのうらぶれたペタレ(Petare)地区にある信仰治療の診療所の待合室は患者であふれ、かつてないほどの盛況ぶりを見せている。

 ベネズエラでは、慢性的な薬不足とハイパーインフレで、病気の治療を信仰治療に頼る人が増えている。

 カルロス・ロサレス(Carlos Rosales)さんは、治療師「ブラザー・グアヤネス(Brother Guayanes)」として診療所を運営している。患者がベッドの上に横たわり目を閉じると、ロサレスさんはひゅっという音やカチッという音をたてながら、患者の腹の上で5本のはさみを次々と振り、「精神的介入」の仕上げをする。

 ロサレスさんは週に200件ほど、こういった治療を行うという。通院するある女性は、ロサレスさんの治療を信じていると言い、「彼のおかげで腎臓がよくなった」と話した。

 カラカス繁華街の市場で薬用植物を売るリリア・レジェス(Lilia Reyes)さん(72)の商売も繁盛している。カモミールの香りに包まれた屋台でレジェスさんは、「需要に追いつかない」と語った。レジェスさんが扱う薬草は150種類に上る。

 カラカスにある公立病院の医師グリスメリー・モリジョ(Grismery Morillo)氏は、不注意な摂取によって死に至る可能性のある薬草もあると警告する。同氏は、ある植物の根を食べて急性肝不全に陥った患者を、数多く診察してきたという。

 こうしたリスクがあるにもかかわらず、他に選択肢はないと言う人もいる。自宅でAFPのインタビューに応じたコロンビア人のカルメン・テレサ(Carmen Teresa)さん(58)は、糖尿病性神経障害の治療にイチジクの葉を煎じて用いている。治療に必要な鎮痛剤は「高すぎる」上、ハイパーインフレでどんどん値が上がっているという。そのため、薬を減らし薬草で治療を補っているという。(c)AFP/Margioni BERMUDEZ