【11月25日 AFP】中央アジアのトルクメニスタンで先週、19年近くにわたって禁止されていた外国オペラの上演が行われた。指導者へのカルト的崇拝ゆえに北朝鮮と比較されることが多い同国では、旧ソ連からの独立後に国を率いたサパルムラト・ニヤゾフ(Saparmurat Niyazov)前大統領が「トルクメニスタン人の精神に相いれない」としてオペラの上演を禁止していた。

 首都アシガバートにある国立劇場で開催されている国際文化フェスティバルの一環として19日に上演されたのは、19世紀のイタリアの作曲家ルッジェーロ・レオンカバッロ(Ruggero Leoncavallo)作の『道化師(I Pagliacci)』。会場は詰め掛けた観客で満員となった。

 19日の夜遅く、劇場を後にする年配の観客たちは、長らくタブー視されてきたオペラへの郷愁を口にし、一方で若い観客たちは公演について熱く語った。

 学校の先生というメカン・ビャシモフ(Mekan Byashimov)さん(54)はAFPに対し、オペラが定期的に上演され、バレエも国内で再びお目見えすることを願っているとし、「自国を文化的な国と呼びたいのならば、オペラとバレエを復活させる必要がある」と語った。

 初めてオペラを観劇したと話す学生のアイナ・シリャエバ(Aina Shiryayeva)さん(20)は、言葉は全く分からなかったが、公演を楽しんだと述べ、「音楽や歌手たち! 全てがとても素晴らしかった。オペラを見られてとてもうれしい!」と語った。

 ガス資源が豊富なことで知られるトルクメニスタンの初代大統領に就任し、変わり者で知られるニヤゾフ氏は2001年、自国の文化を守るための措置としてオペラおよび外国のバレエ上演を禁止。

 旧ソ連やロシアによる帝国的な支配と密接に関連付けられる芸術への禁止措置は、ニヤゾフ氏の後継として2006年に就任した第2代大統領で、ニヤゾフ氏の担当歯科医だったグルバングルイ・ベルドイムハメドフ(Gurbanguly Berdymukhamedov)氏の下でも継続されていた。

 今回上演されたオペラの主要な役のうち、イタリア人が1つを演じたものの、他の役はトルクメニスタン人の歌手たちが担った。

 バリトン歌手のアマンゲルディ・アマノフ(Amangeldi Amanov)氏は、主人公カニオ(Canio)の妻の恋人で、嫉妬したカニオから殺されてしまうシルビオ(Silvio)の役に抜てきされた。アマノフ氏がこの役を演じたのは2001年3月、人口100万人の都市アシガバートにおけるデビュー、かつラストの公演以来2度目。

 アマノフ氏は公演前、AFPによるインタビューで、「われわれにとって歴史的なことだ。私たち若い世代が、欧州の文化と触れ合い始めている。今日の公演は、トルクメニスタンにおけるオペラの伝統が復活する最初の一歩だ」と熱く語った。(c)AFP/Anton Lomov