■同性愛公表は「強み」

 ビクトリー・ファンドはウェブサイトで、米国内の選挙で選ばれたLGBTQの公職者数を示す地図を公開し、定期的に更新している。現在その数は、サウスダコタ州とミシシッピ州を除く全州および政府レベルで、計762人となっている。

 最近の全米世論調査では、有権者がLGBTQの候補をこれまでよりも受け入れるようになっていることが分かっている。

 5月に行われた米調査会社ギャラップ(Gallup)の世論調査では、回答者の76%が同性愛者の候補に投票してもいいと答えており、1978年に比べ3倍となった。共和党よりも少数派の権利に配慮することが多い民主党支持者に限ると、この数字は83%にまで達する。

 ハーバード大学公共政策大学院の政治研究所(IOP)で有権者の投票行動を研究するジョン・デラ・ボルペ(John Della Volpe)氏によると、2020年大統領選の有権者の大半、とりわけ若年層は、性的指向を気にしないという。「有権者は(大統領候補に)誠実さ、ビジョン、信頼性そして人生経験を求めている」とボルペ氏はAFPに語った。「年齢や人種、性別、性的指向に重きを置くのはリスクが高い」

 誠実さや信頼性という点では、同性愛公表は「強み」だという。さらに、ブティジェッジ氏が「自己のアイデンティティーに苦悩した若者」であったという経歴には真実味があると、ボルぺ氏は指摘する。

 だが、反発も残っている。

 10月に発表された世論調査では、調査対象者の45%が、米国はまだ同性愛者の大統領に対する準備が「できていない」、または「あまりできていない」と回答している。

 メディアに流出した選挙チームの文書によると、ノースダコタ州の民主党支持の黒人有権者に対し7月に行った聞き取り調査では、ブティジェッジ氏の性的指向に不快感を示す人もいた。だが、ブティジェッジ氏の落ち着いた抑えた話し方を耳にし、同氏がキリスト教徒であることを知ると、大半の人の不快感は解消されたと文書には記されている。

 民主党はドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領を政権の座から引きずり下ろそうと、最良の大統領候補を立てようとしている。このような極端に分裂した国では、ブティジェッジ氏の性的指向は不利になる可能性もある。

 T・J・スラン(T.J. Thran)さん(25)は11月、ニューハンプシャー州の集会でAFPに、ブティジェッジ氏は性的指向を理由に一部の労働者階級の支持を得られないかもしれないと懸念を示した。

 だがLGBTQの活動家らは、たとえブティジェッジ氏が大統領候補指名を獲得できなくても、出馬自体が長く語り継がれる遺産になると指摘する。

 ビクトリー・ファンドのパーカー氏はブティジェッジ氏について、「もうすでに壁を破っている」と語った。(c)AFP/Catherine TRIOMPHE