【11月21日 AFP】地中海の島国マルタの警察当局は20日、ジョゼフ・ムスカット(Joseph Muscat)首相の汚職疑惑を追及していた著名ジャーナリストのダフネ・カルアナガリチア(Daphne Caruana Galizia)氏が車に仕掛けられた爆弾で殺害された事件で、「重要参考人」として地元の大物実業家の身柄を拘束した。

 事件の仲介役として先週逮捕された男に対し、ムスカット首相が19日、襲撃を指示した黒幕の情報提供と引き換えに減刑を約束していた。

 警察の情報筋がAFPに明かしたところによると、マルタ人実業家ヨルゲン・フェネック(Yorgen Fenech)氏は現地時間20日午前5時半(日本時間同午後1時半)すぎ、所有するヨットでマルタを出国しようとしたところを船上で拘束された。

 2017年に起きたカルアナガリチア氏殺害事件は国民の怒りを招き、抗議デモに発展した。捜査は長期化しており、マルタの司法を疑問視する声が高まっている。

 カルアナガリチア氏は生前、フェネック氏の所有企業が政界の上層部とつながっている疑惑など、汚職の報道に力を入れていた。カルアナガリチア氏の息子アンドリューさんは、殺害に関与した者たちを保護するムスカット首相は「血塗られた手の持ち主だ」とツイッター(Twitter)に投稿した。

 議会では20日、ムスカット首相が事件への関与が指摘される複数の政府当局者の解任を拒否したため、野党議員が途中退出で抗議し、審議は中断。首都バレッタの首相府前では、カルアナガリチア氏の写真を掲げた数百人のデモ隊がムスカット首相の辞任を要求した。議会を後にするオーウェン・ボンニーチ(Owen Bonnici)司法・文化・地方政府相の車をデモ隊が取り囲み、窓を叩いて「マフィア! マフィア!」と叫ぶ一幕もあった。

 事件では、車両爆破の実行犯とされる男3人が訴追されたものの、殺害を指示した人物は今も特定されていない。(c)AFP