■女性に対するレイプや殺人が「戦争の武器」に

 貧困、戦争、人道危機などの非常事態では、女性はさらに弱い立場にさらされる。

 国連の「故意に殺害される女性」に関する統計で上位を占めるのはラテンアメリカとアフリカで、ギャングや民族紛争、失業、貧困などの問題がまん延している国々だ。

 同統計によると発生率が最も高いのはエルサルバドルで、女性10万人当たり13.9人(2017年)がフェミサイドの犠牲になった。次いでジャマイカが同11人(2017年)、中央アフリカが同10.4人(2016年)、南アフリカが同9.1人(2011年)だった。ただし、この数字は政府による統計に基づいており、アフリカやアジアでは統計制度が整備されていない国も多く、実際の数字はこれを上回るとみられている。

 コンゴ民主共和国、ブルンジ、コソボ、イラクなどで行われたように、戦時に女性は戦略的に標的とされることが知られ、紛争下では、女性に対するレイプや暴力、性奴隷化、殺人が「武器」として利用される。

■世界で毎年5000人が「名誉殺人」の犠牲に

 名誉殺人とは、宗教的または伝統的な道徳観や価値観に反した行為──よくあるケースは不適切な家庭出身の男性との恋愛関係、または婚前交渉──をしたと見なされた女性や少女が近親者によって殺害されることをいう。殺害方法は射殺、石打ち、焼殺、生き埋め、絞殺、窒息、刺殺などだが、名誉殺人が行われる国々では、加害者は罪に問われないことも多い。

 国連によると、世界で毎年5000人がいわゆる「名誉殺人」の犠牲となっており、うち約1000人の殺害はインドで起きている。パキスタンでは毎年数百人が名誉殺人の被害者となっている。アフガニスタンで2011年4月から2013年8月の間に名誉殺人の犠牲になった女性は243人だった。

■法律や対策を導入し始めた国々

 スペインは2004年に、ジェンダーに基づく暴力を取り締まる法律を制定し、フェミサイドとの闘いの流れを変えたと評価されている。同国の2003年の女性の犠牲者数は71人だったが、昨年は50人、今年はこれまでで51人だ。

 また、カナダ10州では女性に対する暴力撲滅のための行動計画が策定されており、2009年以降、夫婦間の暴力は減少している。(c)AFP/Lucie PEYTERMANN and Mariette LE ROUX