【11月20日 AFP】発電による大気汚染の健康への影響は、再生可能エネルギーに転換することで、2050年までに80%削減できるとする研究論文が19日、発表された。

 発電によって排出される炭素は、全エネルギー関連における炭素汚染の約40%を占めており、また世界のエネルギー需要も今後さらに増えると考えられている。

 排出量削減の必要性に関しては科学的見解の強い一致がある。ただ、そうした行動が寄与する人の健康への影響については、比較的低い関心しか向けられてこなかった。

 独ポツダム気候影響研究所(PIK)の専門家チームはこのほど、2050年までの発電セクターにおける脱炭素化(化石燃料依存からの脱却)に向けた3つのシナリオを示すために、気候とエネルギー効率のモデルを使用した。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された論文によると、研究チームは、モデル計算の結果と人の健康指標、発電装置の全運用期間の炭素排出レベルを組み合わせ、分析を行った。

 その結果、電力の大部分を太陽光と風力から得るシナリオでは、現在の化石燃料重視の経済に比べて、電力生産に由来する健康への悪影響を80%削減できることが明らかになった。

 論文の筆頭執筆者のグンナー・リュドラー(Gunnar Luderer)氏は、「脱炭素化によって主に恩恵を受けるのは、人の健康だ」と指摘する。

 AFPの取材に応じたリュドラー氏は、「気候変動政策が健康への(悪)影響を軽減するために役立つのであれば、それは非常に大きな恩恵といえる」と述べた。

 世界保健機関(WHO)の推定によると、大気汚染が原因で早死にする人が毎年420万人に上っているという。大気汚染の大半はエネルギー目的での化石燃料の燃焼によって発生する。

 現在のエネルギー動向では、2050年までに世界で600万年分の寿命が失われると、PIKチームのモデルは予測している。一方、今後30年間で再生可能エネルギーが主流となる場合には、この数字が約100万年にまで減少するという。

「これは主に燃料の燃焼に由来する大気汚染の削減に起因する」と、リュドラー氏は説明する。

 リュドラー氏によると、今回の研究ではすべてのシナリオで健康面への利点が示されたが、中でも再生可能エネルギーを中心に添えたシナリオでその有意性が顕著だったという。(c)AFP/Patrick GALEY