【11月20日 AFP】土星の最大の衛星タイタン(Titan)には湖や山、砂丘などがあり、表面を損傷したり成形したりする力である「地形営力(地形を変化させる作用)」の多くが地球を形成した力と同じだとする研究論文が18日、発表された。

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 米カリフォルニア工科大学(Caltech)のロザリー・ロペス(Rosaly Lopes)氏が率いる研究チームによると、タイタンの目に見える外観部分は「太陽系内において、地質学的に最も多様性豊かな地形の一つだ」という。

 英科学誌ネイチャー・アストロノミー(Nature Astronomy)に掲載された論文で研究チームは、「地球とタイタンは、物質や温度、重力場などに違いがあるにもかかわらず、表面の特徴は類似が多く、同じ地質学的過程で生成されたと解釈できる」と述べている。

 タイタンの砂丘や湖の地形は比較的若いが、山岳地帯は古くみえるという。表面は地球と同様に衝突クレーター痕がある他、液体や気体による浸食作用、メタンを大量に含む降雨、地殻運動、火山活動と考えられる現象などの痕跡がみられる。堆積物の蓄積と浸食によって形成された表面は明らかな緯度変動を示しており、赤道には砂丘、中緯度には平原、両極には複雑地形と湖があると、研究チームは説明している。赤道周辺が乾燥地帯で、極に近づくほど湿潤になる。

 研究チームの一人、仏パリサクレー校(Paris-Saclay University)のアリス・ルガール(Alice Le Gall)氏は、タイタンは「表面に液体が存在することが分かっている唯一の地球外天体だ」と説明した。

 メタンは超低温で固体・液体・気体の3種類の状態で存在する。地球では地表に雨が降り、川や湖を形成した後に蒸発して再び雲を形成する。一方タイタンでは、メタンが地球の雨と同じ循環をつくり出していると、ルガール氏はAFPの取材に語った。

 研究チームは、米航空宇宙局(NASA)の無人探査機カッシーニ(Cassini)が収集した電波と赤外線による観測データを用いて、地球から約12億キロの距離にあるタイタンの地図の空白部分の多くを埋めることができたという。カッシーニは2017年に土星に突入し、20年にわたる任務を完了している。(c)AFP