【11月19日 AFP】太平洋地域で活動するカナダ人の著名記者、ダン・マクギャリー(Dan McGarry)氏が、出張先のオーストラリアから自宅のあるバヌアツへ戻ろうとしたところ入国を拒否されたことをめぐり18日、原因はバヌアツにおける中国の影響力に関する同氏の報道に対し、バヌアツ政府が不快感を持ったためだと主張した。

 現地紙「バヌアツ・デーリー・ポスト(Vanuatu Daily Post)」のメディアディレクターを務めるマクギャリー氏は17日、豪ブリスベン(Brisbane)で、バヌアツの首都ポートビラ行きの便への搭乗を拒否された。航空会社職員はこの決定について、バヌアツの出入国管理局の意向だと説明した。

 マクギャリー氏はこの数日前、バヌアツの就労ビザが更新されないことを告げられたばかりだった。同氏は、バヌアツ国内での中国の動きに関するポスト紙の報道に関して、見せしめにされていると主張していた。

 同氏は「罪の自覚がある政府が、都合の悪い現実に直面したときにするだろうこと」をバヌアツ政府がしていると述べ、「彼らはわれわれが報じたことについて誠実に国民と向き合うよりも、私を黙らせて、閉め出す方がいいと思っている」と非難した。

 中国政府は現在、伝統的に太平洋地域で影響力を持ってきた米国、オーストラリア、ニュージーランドなどと覇権を争っている。マクギャリー氏とポスト紙は、中国政府がバヌアツのインフラ整備事業に出資していることや、申請者の大半を中国人が占めるパスポート販売制度について広く報じていた。

 だがマクギャリー氏は、バヌアツ政府が最も問題視したのは、同国の裁判所での手続きを一切経ずに中国警察がバヌアツに入国し、犯罪の容疑者6人を強制送還したという、7月に暴露されたスキャンダル記事だと主張する。この6人のうち4人はバヌアツのパスポート、つまり市民権を保有していた。

 バヌアツで16年間暮らしてきたマクギャリー氏は、ポートビラで暮らすパートナーと幼い娘2人の元に帰りたいと話した。「私は何も悪いことはしていない。それはみんな分かっている…」「われわれが不愉快な真実を紙面で明らかにしたからといって、罪のない子どもらを苦しめるのは全くもって残酷だ」と語った。

 同氏の入国禁止について、バヌアツの出入国管理局にコメントを求めたが、回答は得られなかった。同氏は入国禁止に関して不服を申し立てており、必要であれば訴訟を起こすことも辞さないと話した。(c)AFP