■人間を操るゾンビは存在するか

 米疾病対策センター(CDC)によると、米国人の約4000万人が単細胞生物のトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)に感染している可能性がある。「(トキソプラズマに)感染したネズミは、ネコの尿の臭いに引き付けられ、ネコの体にすり寄っていき、ネコに食べられてしまう。このようにしてライフサイクルが完了するように進化した」とアクティピス氏は話す。「これがゾンビ化でなければ何なのだろうか」

 人間の場合、加熱が不十分な肉を食べたり、ペットのネコを介したりしてトキソプラズマに感染する可能性がある。特にネコ用のトイレを掃除する際に感染することが多い。

 トキソプラズマが脳に感染することとリスク志向や攻撃性といった性格の特徴との関連性を指摘する研究報告がいくつかあるが、この結果に異議を唱える研究もある。狂犬病も同様に動物や人間を攻撃的にし、場合によっては人間を性的に極度に興奮させる。

 また腸内細菌が、何を食べたいかなどといった人間の行動や感情を変化させるという証拠も増えている。アクティピス氏は最近、このテーマの論文を共著で発表している。

 ただし、フィクション作品におけるゾンビ描写の一部は、全く非科学的だ。

 例えば、死体はすぐに腐敗する。このため、米人気テレビドラマ「ウォーキング・デッド(The Walking Dead)」に出てくるような、よろよろ歩く大量のゾンビは実際にはすぐに動けなくなると考えられる。気象条件によっては、数日から2、3週間以内にゾンビの皮膚や筋肉は崩壊する。(c)AFP/Issam AHMED