■スペイン共和派

 スペイン内戦で共和派が敗れると、カルデナス政権(1934〜40年)下のメキシコは、フランシスコ・フランコ(Francisco Franco)政権を逃れた亡命者2万人余りを受け入れた。その後、共和派は1939年から46年までメキシコに亡命政府を置いた。

 この間の亡命者には、詩人のレオン・フェリペ(Leon Felipe)や、冒頭で名前を挙げた伝説的な映画監督ブニュエルがいる。

 フェリペは革命家チェ・ゲバラ(Che Guevara)とフィデル・カストロ(Fidel Castro)の友人だった(カストロもまた、キューバでの武装蜂起が失敗した後にメキシコに身を寄せ、同国でキューバ革命を開始した)。

 また、ブニュエルは共和派のスパイとして活動したほか、プロパガンダを担当していたが、1946年にメキシコに移って国籍を取得。古典的名作『忘れられた人々(The Young and the Damned)』を制作した。

■70年代の中南米独裁政権とモラレス、メキシコ大統領が抱える政治的リスク

 1970年代には中南米各国で独裁政権による残虐な統治が続き、さらに多くの亡命者がメキシコに逃れた。チリでは1973年のクーデターで社会主義政権を率いたアジェンデ大統領が死亡。大統領夫人のオルテンシア・ブッシは首都サンティアゴのメキシコ大使館に逃げ込んだ後、メキシコに亡命した。

 メキシコでは昨年、左派のアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)氏が大統領に当選。今月12日に同じく左派のモラレス前ボリビア大統領を受け入れたが、今回の措置によって政治的リスクを抱える可能性がある。

 ロペスオブラドール大統領はドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領との間で「平和と愛」の関係を維持しようとしているが、トランプ大統領はモラレス氏嫌いを公言しており、受け入れによって両大統領の関係が損なわれかねない。

 しかし前出の元外交官、グティエレス氏は、モラレス氏の保護は国際条約上の義務に従った措置だと指摘。「政治亡命者の保護が、イデオロギーをめぐる配慮によって左右されないことが重要だ」とした上で、亡命は「政治的迫害を受け、生命、自由、安全が危険にさらされている人々のため」の措置だと述べた。(c)AFP/By Sofia MISELEM