■変わらない社会の保守的態度

 アムネスティ・インターナショナルの中国研究者ドリアーヌ・ラウ(Doriane Lau)氏は、「差別的な法律と政策によって、多くの人が極めて危険な外科手術を自らに施して命を危険にさらすか、闇市場で危険なホルモン剤を購入する以外に選択肢がないと感じている」と指摘する。

 中国政府は今年3月、国連人権理事会(UN Human Rights Council)のLGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス)に対する差別禁止を求める勧告を受け入れた。世界保健機関(WHO)は5月、「性同一性障害」を国際疾病分類(ICD)の精神障害の分類から除外している。

 現在、性的少数者の支援活動に携わるアリスさんは、性的少数者、特にトランスジェンダーに対する中国社会の保守的な態度が、政府の対策が遅々として進まない理由だと指摘する。

 アリスさんは「今はまだ時期ではない。政府ができることは、社会の意見によって制限されてしまう」と話す。「次世代が発言力をつけるようになるまで待つ必要がある。その時には改善されているだろう」

 アリスさんは昨年、タイで男性器を切除する手術を受けた。手術費用は9万元(約140万円)を超えた。

 アリスさんは術後の生活について、「ずっと自然でいられて、とても気分がいい」と話す。「(性自認は)必ずしも白黒つけられるものではないので…本当に良かった」 (c)AFP/Pak YIU