【11月12日 AFP】絶滅寸前と考えられていた小型のシカに似たマメジカの希少種が、ベトナム北西部のジャングルの中で約30年ぶりに発見された。11日の英科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に論文が掲載された。
 
 背から横腹にかけての銀色の毛が特徴的なマメジカの一種(学名:Tragulus Versicolor)が初めて記録に登場するのは1910年。ベトナム・ホーチミン(Ho Chi Minh)の北東約450キロにあるニャチャン(Nha Trang)近辺で発見された数頭の個体を基に記録が取られた。1990年以降は確認された目撃例がなく、専門家の間では、狩猟によってほぼ絶滅しているのではないかと思われていた。

 しかし、ベトナム人生物学者のアン・グエン(An Nguyen)氏は長年、このマメジカの一種がまだどこかに生息している可能性があるのではないかと考えていた。グエン氏は、独ライプニッツ野生動物研究所(Leibniz Institute for Zoo and Wildlife Research)の博士課程学生で、米野生生物保護団体「グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション(Global Wildlife Conservation)」と活動している。

 グエン氏は、地元の村民に会いに行き、目撃証言を精査。いくつかの証言から、特徴がこの種に間違いないと思われたため、近隣の森林生息地に動体検知カメラを30台以上設置した。

「結果は驚くべきものだった。カメラトラップ(赤外線センサーなどで野生動物の動きを感知するカメラ)をチェックして、横腹が銀色のマメジカの画像を目にしたときは大興奮した」と、グエン氏は述べている。

 だが、研究チームは「今回この種が比較的容易に見つかったからといって、絶滅の危機に直面していないわけではない」と注意を促している。

 東南アジアの森林は人口増と開発による非常に大きな圧力を受けており、「そのために先手を打って(保護に)取り組む必要がある」と、研究チームは続けている。(c)AFP