【11月12日 AFP】ラグビーW杯日本大会(Rugby World Cup 2019)を制したスプリングボクス(Springboks、南アフリカ代表の愛称)の優勝パレードが、11日に最終日を迎え、選手たちは、獄中生活を終えた故ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元大統領が最初にスピーチを行ったケープタウン市庁舎で、熱狂的なファンを前にトロフィーを掲げた。

 南アフリカの優勝ツアーの終着地は、撤廃から25年が経過したアパルトヘイト(人種隔離政策)による傷をいまだに抱える同国において、団結のメッセージを強く印象づけた。

 同チーム初の黒人主将となったシヤ・コリシ(Siya Kolisi)は、数千人のファンの前で「われわれが皆どれだけ違っているかを見てくれ。人種も背景も異なる。チームはサウス(南アフリカ)のために団結し、それを実現した」と語った。

「私は今、皆さんに話しかけている。周りを見ればさまざまな人種の人がいて、その背景もさまざまだ。だが、皆さんが今われわれのためにどれだけ特別なことをしてくれているのかにも目を向けてほしい」

 大きな広場に集まったファンに大声援で迎えられる中、コリシは「南アフリカが闘ったり言い争ったりするのをやめ、一つの国として前に進むときが来た」と続けた。

 1990年2月11日、マンデラ元大統領が27年にわたる獄中生活を終えた数時間後、喜びに満ちた大衆に向けてスピーチしたのも同じ市庁舎前の広場だった。このスピーチはマンデラ元大統領にとって釈放後最初の大演説となり、少数派の白人による支配が終焉(しゅうえん)を迎えたように、同国が生まれ変わる上で重要な瞬間だった。

 2日に行われたW杯の決勝でイングランドを32-12で下し、3度目の優勝を果たしたスプリングボクスは、かつてエリート白人の領分だったラグビーにおいて、最も人種が交ざり合ったチームとして新境地を開拓した。

 スプリングボクスの選手たちは同日、反アパルトヘイト活動の象徴的存在で、同チームの緑色のジャージーを着たデズモンド・ツツ(Desmond Tutu)元大主教のもとも訪れた。

 ツツ元大主教は発表文の中で「この若い集団が成し遂げたことは、ラグビーの分野を超え、われわれが何になり得るのかという可能性について証明している。たとえ出身がどこでも、不可能と思えるものを得ようとすれば、それを達成できる」と記した。

 チームの大半のメンバーと比較すると小さく見えたツツ元大主教は、特にトレバー・ニャカネ(Trevor Nyakane)とテンダイ・ムタワリラ(Tendai Mtawarira)の大きさに感銘を受けた様子で、SHのファフ・デクラーク(Faf de Klerk)は同主教に「優勝した後、(英国の)ヘンリー王子(Prince Harry)に披露したことで知られる愛国心の強さを感じさせる下着」を見せたという。(c)AFP