【11月13日 AFP】米国防総省は現在、シリアにおける米軍の役割をめぐり難しい問いに直面している。米国は現在、従来の駐留地域よりも狭く、守りにくい範囲に限定して兵士を配置し、油田の防衛に徹しているが、この油田は法的にはシリア政府のものだ。

 米政府は「名ばかりの撤退」「目標設定の難しさ」「法的正当性」という主に3つの悩みの種を抱えている。

■名ばかりの撤退

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は10月6日、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」と戦うためシリアに派遣されていた米兵1000人を撤退させると発表。ツイッター(Twitter)投稿で「このばかげた終わりなき戦争から引き揚げる時が来た。多くが部族的な争いだ。兵士たちを帰らせよう」と表明した。

 しかし1か月がたった今も、米国がシリアに駐留させている兵士の数はさほど変わっていない。北西部のトルコ国境地帯にいた特殊部隊を撤退させる一方、シリアの主要な油田がある東部デリゾール(Deir Ezzor)に装甲部隊を派遣したためだ。

 結局、撤退はなされなかったということだろうか。

 国防総省のジョナサン・ホフマン(Jonathan Hoffman)報道官は今月7日の記者会見で「われわれは地域にとどまる」と述べ、「必要だとの確信がある限り」、米兵はシリアに残ると明言した。

 また、米軍制服組トップのマーク・ミリー(Mark Milley)統合参謀本部議長は10日、米ABCニュース(ABC News)で、駐留する米兵は「確実に1000人未満になる」と述べ、「おそらく500人程度だろう。600人かもしれない」との見通しを示した。

■目標設定の難しさ

 トランプ大統領が今後の任務は油田を守ることだと述べる一方、国防総省は論理解釈を駆使し、IS掃討が米国の目標であることは変わらないと強調している。

 ウィリアム・バーン(William Byrne)統合参謀事務次長は7日、ホフマン報道官と並んで行った記者会見で、「任務はISIS(ISの別称)打倒だ。油田の確保はその任務に付随している。ISISが石油インフラから収入を得られないようにすることが目的だ」と述べた。

 またホフマン報道官は、ISの戦闘員が油田に手を出せないようにするだけでなく、クルド人主体の民兵部隊「シリア民主軍(SDF)」が「収入源を手にして、ISIS掃討作戦の遂行力を構築できるようにする」ことも米国は望んでいるとした。

 SDFはIS掃討作戦における米軍の主要な同盟勢力だが、米政府が撤兵を決めた当初は裏切られたとの所感を持っていた。

■法的正当性

 米議会は2001年9月11日の同時多発攻撃の後、政府に対し、テロとの戦いで無制限に軍事活動を行う権限を与えた。国防総省は現在、その権限をシリアの油田を掌握する根拠としている。

 またホフマン報道官は、米国はシリアの石油を盗んでいるのかとの記者からの質問に対し、「ここからの収入の行き先は米国ではない。SDFだ」と答えた。(c)AFP