【11月11日 AFP】インドの首都ニューデリー在住のレイチェル・ゴカビ(Rachel Gokavi)さん(26)は出産を間近に控え、ほぼ毎日自宅にこもっている。インドでの流産や乳児死亡が急増している原因だとされる最悪レベルの大気汚染から、おなかの子どもを守るためゴカビさんは必死だ。

 ゴカビさんはAFPに「バルコニーへ通じるドアはいつも閉めておき、外出もあまりしない。子どもが生まれた時に呼吸器に問題があるのではないかと不安だ」と語った。

「朝の散歩はしない。天気がいい日は午後に外出すること」。出産前教室に参加した妊娠した女性たちは眉間にしわを寄せながら、真剣に講師のアドバイスに耳を傾ける。ゴカビさんら妊娠中の女性たちは、有毒な大気を日々吸い続けなければいけないことに無力感と怒りを覚えている。

 ニューデリーの大気汚染は深刻で、デリー首都圏政府の首相は最近、この状態を「ガス室」に例えたほどだ。すぐに解決する見通しもなく、医師のできる助言も限られている。マスクの着用と、できれば自宅に高価な空気洗浄機を置くこととアドバイスしているが、高価なものを買う余裕がない家庭も多い。

 世界保健機関(WHO)によれば、世界で最も大気汚染が深刻な15都市のうち14都市がインドにあるという。

 ニューデリーは毎年冬になると、自動車の排ガスや工場の排煙と近隣地域の農地での野焼きの煙が混ざり合った有害なスモッグに覆われる。今年6月のインド政府の調査によると、インドでは毎年100万人が大気汚染によって死亡しており、このうち5歳未満の子どもが10万人以上を占めている。

 医師によると、子どもは肺が小さいため有毒な大気を大人の2倍の速度で吸い込んでおり、これが呼吸器系疾患や脳の発達を妨げる要因となっているという。また、国連児童基金(UNICEF、ユニセフ)は今月、高濃度の大気汚染にさらされた若者は、メンタルヘルスに問題を抱えやすいとの調査結果を発表している。