【11月10日 AFP】(写真追加)1989年のベルリンの壁(Berlin Wall)崩壊から30年を迎えた9日、ドイツのフランクワルター・シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)大統領は、「米国第一」を掲げるドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領を念頭に、利己主義を捨て「互いに尊重し合える同盟国」となるよう米国に呼び掛けた。

 シュタインマイヤー氏は、 米国がベルリンの壁崩壊に向けて重要な役割を果たしたと当時を振り返り、故ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)元米大統領が名所ブランデンブルク門(Brandenburg Gate)で「この壁を壊しなさい」と言ったのが今も耳に残っていると述べた。

 シュタインマイヤー氏は、「当時の米国は相互に尊重し合える同盟国で、国家の利己主義に対抗する、民主主義と自由の同盟国だった。将来もそうあってほしいと願っている」と述べ、トランプ氏の米国第一主義と、米南部の対メキシコ国境に壁を建設することへの執着を批判した。

 シュタインマイヤー氏の厳しい言葉は、伝統的な同盟国であるドイツと米国と間の緊張が高まっていることを浮き彫りにした。トランプ氏は、イランの核開発への対応から、米国と欧州の貿易、気候変動まで、さまざまな問題に独自の姿勢を取っており、ドイツは大いに振り回されてきた。

 トランプ氏はワシントンから祝辞を送り、全世界から見える希望と機会の光として燃え続ける自由の炎を守るため、米国は「最も貴重な同盟国の一つであるドイツと連携し続ける」と述べた。

 旧東ドイツ出身のアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相は、ベルリンの壁跡に立つ教会で執り行われた厳粛な式典で、民主主義と自由をあって当然のものとみなしてはいけないと警鐘を鳴らし、これらの価値観を守っていくよう欧州諸国に呼び掛けた。

 メルケル首相は欧州諸国から集まった招待客に対し、「欧州の基盤となる価値観は、決して自明ではない。常に改めて実践し、守り続けなければならない」と述べた。(c)AFP/Tom BARFIELD