■皮肉な結末

 バレ氏自身は、完全に国境のない世界という考えについては懐疑的だ。国境と国家主権は消滅するというかつて流行した思想は、ポピュリズム(大衆迎合主義)に基づく敵意に満ちた反応を引き起こした。バレ氏はその例として、トランプ氏のメキシコとの国境の壁建設計画と、イタリアの極右政党を率いるマッテオ・サルビーニ(Matteo Salvini)氏による移民の入港禁止措置を挙げている。

 国境に関する報告書を最近、共著で発表したシンクタンク「トランスナショナル・インスティテュート(Transnational Institute)」のニック・バクストン(Nick Buxton)氏も同様の見方を示している。極右政治家は「特に経済的、社会的またはその他の理由で人々が不安を感じている時に、人々が恐怖を感じている部分」に訴えかけてくると、バクストン氏は指摘する。

「多くの国境警備会社が、政府に国境警備技術強化のための資金提供を働きかけていることを考えると、ますます世界は軍事的な壁によって分断される」とバクストン氏は語る。

「世界の要塞(ようさい)化が進むと、人々はますます不安を感じ、不安と恐怖の悪循環という皮肉な結果を生む」 (c)AFP/Yacine LE FORESTIER