【11月8日 AFP】中国の裁判所は7日、米国にオピオイド系鎮痛剤のフェンタニルを密輸したとして9人に懲役判決を言い渡した。米国との共同捜査が実った初の事例で、今後のさらなる協力も言明した。ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は、米国のオピオイド系鎮痛剤の危機を増大させている中国供給業者に政府が対策を講じていないと怒りを表明していた。

 トランプ氏は今年に入り、薬物製造を取り締まるとの約束を守っていないとして中国を批判。これに対し中国はフェンタニルの違法取引問題に取り組むため、米国と「誠実かつ具体的な薬物対策で協力する用意がある」と表明した。

 米中貿易交渉は1年以上にわたり難航し、行き詰まりの原因の一つに中国製フェンタニルの米国への大量流入がある。今回の判決は両国が貿易協定の成立を目指す中で出された。

 米当局によると、米国では合成オピオイドによる死者が1日当たり100人を超えている。合成オピオイドはヘロインと比べ、最大50倍の強さがあるといわれる。

 中国北部河北(Hebei)省の裁判所は今回の判決について、フェンタニルの密輸関連の米中共同捜査で初めて成果が出た事例と表明。米当局も判決を歓迎した。米国土安全保障省から中国に派遣されているオースティン・ムーア(Austin Moore)氏は判決後、中国側との共同記者会見で、「共同捜査の成功が示すように、米中の捜査員には国境を超え協力する能力がある」と語った。
 
 裁判所によると、中国の麻薬規制当局は米国境管理当局からの情報を基に捜査を始め、2017年、上海と江蘇(Jiangsu)省東部を拠点とする犯罪組織を摘発。11.9キロに上るフェンタニルを押収した。

 河北省で有罪判決を受けた被告9人のうち、1人は執行猶予2年の死刑判決を言い渡された。これは通常、無期懲役を意味する。

 2人の被告はフェンタニルとアルプラゾラムの違法取引で無期懲役を言い渡された。アルプラゾラムはザナックス(Xanax)の商品名で知られる抗不安作用のある処方薬。(c)AFP/Jing Xuan TENG