【11月10日 東方新報】「キャッシュレス元年の日本でQRコード決済は普及するか」というタイトルの分析リポートを、日本貿易振興機構(JETRO)が報じた。リポートによれば、中国ではスマートフォンを使ったモバイル決済をする人口が6億人超(2019年6月)となった。利用金額は2018年時点で40兆ドル(約4362兆円)を超える大規模なものとなっているという。

 短期間で普及した理由として、「西側諸国のクレジットカード会社のような割高な利用手数料を支払う必要がない」「近年まで偽札が市場に出回っていた中国では、モバイル決済をしたいという土壌があった」「特別な機械が必要でなく、露天商でもQRコードを印刷した紙を準備すれば、顧客のスマホ決済を受け入れられる」など店側の理由がいくつか挙げられ、リポートの最後には、「日本での普及のカギは決済サービス端末」だと結論づけている。

 しかし、その端末の納品遅れを報じるニュースが後を絶たない。今月1日にもNHKは、「消費増税1か月、ポイント還元は来年にずれ込む見通し」とし、長野県岡谷市の十数店舗の事情を伝えた。店に設置するキャッシュレス決済の端末の生産が全国規模で遅れている。その結果、ポイント還元のサービスの開始は、来年1月中旬にずれ込む見通しだという。

 中国では、大規模なチェーン店は別として、零細店舗では特別なモバイル決済端末は見かけない。普及初期の2015年頃は、モバイル決済に慣れない顧客はQRコードを表示するだけで、店員側のスマホでQRコードを読み取り、金額入力をして決済する方式が多かった。そうやって社会全体がモバイル決済に慣れ、その便利さを体感していくにつれ現金決済が減っていった。小売店は細かいお金の会計トラブルが激減し、偽札トラブルも激減した。

 10月1日の消費税率の引き上げに合わせて、「端末を入れるのが経営合理化」というメーカーのセールストークが強すぎるから、日本の零細事業者は簡単にモバイル決済を始められないのではないか。もしくは、モバイル決済に絡む日本の社会全体のシステム、例えば消費税制度が簡素でない、銀行とクレジットカード会社とモバイル決済サービス会社の口座連動が簡素でないなど、イノベーションの社会浸透を阻害する制度問題が日本社会に存在するのではないか。

 日本が世界に模範を示す、イノベーティブな先進国になるためには、この機会に社会のしくみを見直す必要があるのだと思う。(c)東方新報/AFPBB News