【11月4日 AFP】第2次世界大戦(World War II)中のギリシャで、地元の3人姉妹によって2年間にわたりナチス・ドイツ(Nazi)からかくまわれ、命を救われたユダヤ人の姉弟が3日、恩人と75年ぶりに感動の再会を果たした。

 ホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)を生き延びたサラ・ヤナイ(Sarah Yanai、旧姓モルデカイ〈Mordechai〉)さん(86)は、目に涙を浮かべたモルポメニ・ディナ(Melpomeni Dina、旧姓ジンプール〈Gianopoulou〉)さん(92)の手を握り、「とても感動しています。言葉にできない」と涙ぐんだ。

「私たちは、彼女の家に隠れていました。彼女は私の家族全員、6人を守ってくれた。彼女たち一家にとって、私たちをかくまうのがどれほど危険だったことか」とヤナイさんは語った。「何と言えばいいのでしょうか。彼女たちが、私たちの命を救ってくれたのです」

 戦時中、ディナさんは姉2人と共に、北部の港湾都市テッサロニキ(Thessaloniki)近郊の小さな町ベリア(Veria)の自宅にモルデカイ一家を2年間かくまった。ヤナイさんの弟ヨシ・モア(Yossi Mor)さん(77)はかくまわれた当初、まだ生後2か月だった。

 ヤナイさんとモアさんは3日、子どもや孫たち合わせて20人以上を伴い、中東エルサレム(Jerusalem)にあるホロコースト記念館「ヤド・バシェム(Yad Vashem)」の「名前の広間(Hall of Names)」でディナさんと再会。全員が一人ずつディナさんの前に立ち、順番にハグを交わした。

 ディナさんらにかくまわれた逸話を繰り返し聞かされて育ったというモアさんの孫、ヨシ・ダガン(Yossi Dagan)さん(28)は「僕にとって、ギリシャの3人姉妹は英雄的行為の象徴であり、人生のかがみです」と話した。

 一方、ディナさんはギリシャ語で「もっとたくさんの人を救いたかった」と述べた。

 ディナさんと姉2人は、第2次大戦中に大きな危険を犯してユダヤ人の命を救った人に感謝を示す称号「諸国民の中の正義の人(Righteous Among the Nations)」を1994年にヤド・バシェムから贈られ、表彰された。

 ナチス・ドイツの統治下では、1939年~45年に当時のユダヤ人人口の3分の1を上回る約600万人のユダヤ人が犠牲になったとされる。(c)AFP