【11月4日 AFP】サッカー中国リーグでただ一人の英国人指揮官が、ヤヤ・トゥーレ(Yaya Toure)の開始10秒での退場と終了間際の決勝点で、南通支雲(Nantong Zhiyun)の降格圏からの大脱出を完遂させた。

 ギャリー・ホワイト(Gary White)監督は、イギリス領ヴァージン諸島やバハマ、グアム、チャイニーズ・タイペイ(台湾)、香港といった代表チーム、Jリーグ2部(J2)の東京ヴェルディ(Tokyo Verdy)を率いた経験を持ち、現在は2度目となる中国本土のクラブを率いている。

 しかしホワイト監督はAFPの取材に応じ、2日に行われた甲級リーグ(2部)最終節の青島黄海(Qingdao Huanghai)戦で南通を残留させたことは、自身が成し遂げてきた中でも指折りの快挙だと語った。

 45歳のホワイト監督は8月、降格を免れるのに8試合しか残されていない中で南通の指揮官に就任。最初の2試合こそ黒星を喫したものの、その後は5試合連続で無敗を維持した南通は、勝利すれば残留が決まることを知った上で、トゥーレが所属する首位青島との困難な一戦を迎えた。

 スペイン1部リーグのFCバルセロナ(FC Barcelona)やイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティ(Manchester City)で活躍した青島のトゥーレがキックオフ直後相手選手を蹴って退場となり、南通とホワイト監督の残留への挑戦は最高のスタートを切った。

 36歳のトゥーレは自身の無実を主張したが、ホワイト監督は「明確なレッドカードだった。彼はペナルティーエリアの端で、われわれのチームのセントラルMFを乱暴に蹴った」とコメントした。

 しかし、すでに昇格を決め、リーグ優勝を目指していた10人の青島が60分を前に先制したため、南通はこのままでは残留プレーオフに回ることになっていた。他の2チームと残留争いをしている中、他会場の結果から目を離さないようにしながら、選手に指示を送ったホワイト監督は「大忙しだった」と振り返った。

 ゴールを決める必要のあった南通は、失点から2分後に追いつくと、90分には逆転弾をマークし、残留を確実にした。

 3日、選手たちが南通(Nantong)の空港に到着すると、ホワイト監督の手は花束でいっぱいになり、チームバスが市内の道路に沿って凱旋(がいせん)すると、横断幕や発煙筒を手にしたファンは大声で歌った。

■心をつかむ

 ホワイト監督は、2か月にわたり勝利から見放され順位が急落していた南通を引き継いだ。

 指揮官は「クラブにやってきたときは本当に良い境遇にはいなかった。選手は十分にフィットしておらず、欠けているものが多くあった」と語った。

「多くの人がそれについて注目していたし、自殺行為だと言っていた」「私はできないということをまったく心配していなかった。いかなるミスをする時間も残されていないだけだった」

 選手に再び自分たちを信じさせたことが、ホワイト監督が成功した大きな理由だ。

「もし人の心をつかむことができれば、その人の脚はついてくるものだと私はいつも言っている」 (c)AFP/Peter STEBBINGS