【11月7日 東方新報】中国民間経済研究で知られる英国人経済コンサルタントのルパート・フーゲワーフ氏(Rupert Hoogewerf)が運営する胡潤研究院(Hurun Research Institute)が先月28日、「2019年80年代生まれ創業者富豪ランキング」を発表。1位はEコマースの新勢力・拼多多(Pinduoduo)の創始者、39歳の黄崢(Huang Zheng)氏だった。

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 創業4年目で、この一年間、毎日1億元(約15億3304万円)以上ずつ資産を増やした計算となり、資産総額は前年から400億元(約6132億1600万円)増の1350億元(約2兆696億円)となった。黄氏は「フーゲワーフ中国長者番付」にもベストテン入りしている。

 黄氏は1980年に浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)生まれ。工場労働者家庭に生まれながら数学オリンピックでメダルを獲得するほどの学業優秀者で、中高一貫の名門・杭州外語学校に進学。オンラインゲーム大手・網易(NetEase)創始者の丁磊(Ding Lei)氏や、中国小売り大手・歩歩高(Better Life Group)総裁の段永平(Duan Yongping)氏とIT企業家らと知遇を得て、浙江大学(Zhejiang University)コンピュータ専門学校を経てウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin-Madison)に留学し、2004年にコンピュータ学修士を取得した。

 その後、入社した米グーグル(Google)で中国事務所設立に参加したのち、2007年に退社すると、自分でネットショッピングやネットゲームの会社を立ち上げた。2015年に手持ち企業をSNSとEコマースを連動させた拼多多として合併し、自ら董事長兼CEOとなった。

 拼多多の特徴は「共同購入」と「最低価格」。田舎の労働者家庭に生まれた自分と同様の生活水準の顧客をターゲットにし、ゲーム開発者らしい発想で、チームワークでより安く購入する楽しさを追求したところが、阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング、Alibaba Group Holding)や京東(JD.com)などの大手企業ひしめくEコマース市場での競争を可能にした。

 黄氏の成功の秘訣は自らSNSで発信したビジネス哲学10章の中で明らかにされている。浙江外語学校は国際人材を育てるファームのような場所で、同窓生160人の中にいわゆる「富二代(Fuerdai)」と呼ばれる富豪の子弟がごろごろいる環境。開放的でリベラルな気風の国際志向のエリート教育を受ける一方、持てる者と持たざる者の差を痛感することもあった。当時最も影響を受けた書籍に、バートランド・ラッセル(Bertrand Russell)の『幸福論(The Conquest of Happiness)』を挙げている。「ある場所の非主流が別の場所の主流となる」と言う格言が、のちの市場に対する考え方の根底をなしており、22歳で「田忌競馬式市場競争(訳:全体的に能力が劣っていても、局所で勝つことで最終的に勝利する)」「金は手段であって目的ではない」といったビジネス哲学にたどり着いていたという。

 フーゲワーフ研究院の分析によれば、ソフト開発、ブロックチェーン、娯楽メディア部門は80年代生まれ若手起業家の活躍が際立つ市場で、この主要な三大業界が80年代生まれ若手起業家ランキングの4割を占めている。ランキング2位は、ニュース検索サイト・今日頭条(Jinri Toutiao)と抖音 (Douyin)創業者の張一鳴(Zhang Yiming)氏で、総資産950億元(1兆4577億円)。3位が中国の主要ドローン・メーカー「大疆創新科技(DJI)」の創始者の汪滔(Wang Tao)氏が470億元(約7205億2880万円)、4位がオンライン教育企業・学而思の創始者の張邦鑫(Zhang Bangxin)氏が440億元(約6745億3760万円)。彼らも今年のフーゲワーフ中国長者番付100にランキングされている。

 1980年代生まれで、一代で富豪となった創業者の平均年齢は36歳。女性はたった1人で、インターネットサービス企業の漢鼎宇佑(Hakim Unique Internet)の呉艶(Lilian Wu)氏。また80年代生まれ創業者の出身地は北京・上海・杭州・深セン(Shenzhen)の四大都市に集中しており、それ以外の出身者はわずか10%だった。世界で注目をあびる中国のベンチャー、スタートアップ企業業界だが、都市間格差、男女格差はかなり存在するようだ。(c)東方新報/AFPBB News