【11月1日 AFP】かつて雄大と呼ばれたメコン(Mekong)川は今、タイ東北部では浅く薄汚い川に成り果てている。記録的な低水位の原因は、干ばつとこのほど完成した上流の水力発電用ダムだとされている。

 ラオスで10月29日、総工費44億7000万ドル(約4830億円)のタイが所有するサヤブリ(Xayaburi)ダムが完成した。だが、サヤブリダムの建設は、メコン川の魚の回遊、堆積物、水位だけではなく、数千万の人々の生活に影響を及ぼすと長年警告されてきた。

 ラオスと国境を接するタイ東北部ルーイ(Loei)県の一部では、以前は1キロあった川幅が、今ではわずか数十メートルになり、岩に囲まれた泥の水たまりのようになってしまっている。上空から見るとラオス側でもタイ側でも川岸が広がり、細い筋状の水が流れているだけで、漁場も限られてしまっている。

 漁師らは、今年はモンスーンが弱い上に、約300キロ北方にサヤブリダムができたせいだとしている。

 内陸国で貧しいラオスは、「アジアのバッテリー」となることを目指している。米環境団体インターナショナル・リバーズ(International Rivers)によるとラオスでは現在、メコン川の主な支流で44か所の水力発電所が稼働しており、さらに46か所が建設中だ。

 メコン川流域の国際間の水利関係を管理する国際機関「メコン川委員会(Mekong River CommissionMRC)」の発表によると、6月から10月までの水位は約30年間で最低水準だった。

 MRCによると、ラオスの首都ビエンチャンの対岸に位置するタイ東北部ノンカイ(Nongkhai)県では、10月29日に水位が平均よりも数倍浅い約1メートルまで落ち込んだ。

 MRCはAFPの取材に対し、メコン川全体の水位は「この時期の最低水準を大幅に下回っており、さらに減少すると予想される」とし、「間もなくやって来る乾期が心配だ」と述べた。