【11月1日 AFP】希少難治性疾患「嚢胞(のうほう)性線維症」の遺伝子的原因に対して、最新の3剤併用療法が極めて有効であることが分かった。臨床試験結果を報告する2件の研究論文が10月31日、発表された。

 嚢胞性線維症を引き起こす遺伝子の特定から30年という節目の年に発表された今回の研究結果について、米国立衛生研究所(NIH)のフランシス・コリンズ(Francis Collins)所長は「これは祝うべきことだ」と称賛した。コリンズ所長は同疾患の原因遺伝子を特定したチームの一員だ。

 この療法「Trikafta」は、原因遺伝子CFTRを標的とする3種類の薬剤を組み合わせた治療法だ。米国では約3万人が罹患(りかん)しており、肺、消化管や他の身体部位に多量の粘液の蓄積を引き起こす。

 これが原因となり、呼吸器系や消化器系の問題が起きるほか、感染症や糖尿病などの合併症の発症にもつながる。患者の平均寿命は30~40年とされる。

 今回の最新療法は、CFTR遺伝子の最も多くみられる変異「Phe508del変異」を標的とする。この変異は患者の約90%にみられる。

「米医学誌ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)と同時に英医学誌ランセット(The Lancet)に発表された2件の第3相臨床試験の結果は、目覚ましい効果を実証するものだ」と、コリンズ所長はニューイングランド医学ジャーナル誌に掲載された解説記事に記している。

 臨床試験では、患者が強制呼吸中にどのくらいの量の空気を吐き出すことができるかを調べた。これは嚢胞性線維症の進行を表す指標として確立されている。

 ニューイングランド誌の治験では、プラセボ(偽薬)に比べて平均レベルが13.8%、ランセット誌の治験では、以前の混合薬に比べて平均レベルが基準値から10%上昇していた。

 コリンズ所長は、新療法に応答しないと考えられる別種の変異を持つ患者についてはさらなる研究が必要と指摘し、最善の結果は世界中で7万人以上に上る嚢胞性線維症患者が遺伝子編集で根治して薬が必要でなくなる時にもたらされると述べた。(c)AFP