【10月31日 AFP】2017年6月に英ロンドン西部の高層住宅「グレンフェル・タワー(Grenfell Tower)」で発生した大規模火災について、英報道各社は29日、消防当局の対応が適切であったならば犠牲者の数は減らせたとする公式報告書の内容を伝えた。

 同火災では71人が死亡。複数のメディアが報じた30日発表予定の公式報告書によると、大規模火災に対するロンドン市消防局(London Fire Brigade)の対策は「全くもって不十分」であり、同局の対応には組織的怠慢の影響もみられたという。

 また、同報告書はダニー・コットン(Dany Cotton)消防局長について「並外れた無神経さ」だったと批判。グレンフェル・タワー火災についてコットン氏は事故後の調査に対し、消防当局の対応の正当性を主張していた。

 英通信社プレス・アソシエーション(PA)によると、元高裁判事で調査委員会の委員長を務めたマーティン・ムーアビック(Martin Moore-Bic)氏は報告書で、「ロンドン市消防局の対応には、指揮の面でも現場対応の面でも重大な欠陥が認められた」と指摘。

 さらにムーアビック氏は、「これらの欠陥が大部分は組織的な理由によるものと認めることは適切だ」と結論付けた。

 ムーアビック氏はまた、ロンドン市消防局による住民への火災の際の待機勧告について、もっと早く撤回すべきだったと断定。「犠牲者の数は少なくなっていた可能性がある」と指摘した。

 ロンドン市消防局は当時、グレンフェル・タワーの住人に火災発生時には避難せずに屋内にとどまるよう勧告しており、撤回されたのは出火から2時間後だった。事故後、この対応には直ちに非難の声が集まった。

 ただ、市消防局は「明白で安全な代替策はなかった」とし、当時の対応を擁護している。(c)AFP