【10月30日 AFP】米フェイスブック(Facebook)傘下のメッセージアプリ、ワッツアップ(WhatsApp)は29日、同アプリを利用して記者や人権活動家らを標的にスパイ活動を行ったとして、イスラエルのサイバー技術会社NSOグループ(NSO Group)を提訴した。

 訴訟は米カリフォルニア州の連邦地裁に提起された。ワッツアップ側によると、NSOは同アプリ利用者から有益な情報を盗むため、約1400人の「対象デバイス」をマルウエア(悪意のあるソフトウエア)に感染させようとしたという。

 ワッツアップ責任者のウィル・キャスカート(Will Cathcart)氏は、NSOがサイバー攻撃について否定している一方で、捜査によって同社の関与が判明したため、提訴に至ったと述べた。

 キャスカート氏はツイッター(Twitter)に、「NSOグループは、責任を持って政府に尽くしていると主張する。しかしわれわれは、人権活動家や記者ら100人以上が攻撃の標的となったのを確認した。こうした不正利用は阻止しなければならない」と投稿した。

 訴状によると、NSOが開発した「ペガサス(Pegasus)」として知られるソフトウエアは、アンドロイド(Android)とiOS、ブラックベリー(BlackBerry)のOSを搭載したデバイスをハッキングするため、遠隔でインストールされるよう設計されている。

 キャスカート氏はサイバー攻撃について、「利用者はビデオ通話らしきものを受け取るが、それはただの着信ではない」と述べ、「電話が鳴ると、攻撃者は対象デバイスをスパイウエアに感染させるために、悪質コードをひそかに送信する。利用者は、電話をとる必要すらない」と説明した。

 訴状によると、悪質コードは4月29日~5月10日ごろにかけてワッツアップのサーバー経由で送信された。弁護士や記者、人権活動家、反体制活動家、外交官、外国政府高官らのデバイスも攻撃の対象となったという。

 全世界に約15億人の利用者がいるワッツアップは5月、マルウエアの侵入が可能となるセキュリティー上の欠陥を修正するため、利用者にアプリの更新を呼び掛けていた。(c)AFP/Glenn CHAPMAN