■人身売買の被害

 だが、英国までの旅費は安くない。

 密入国業者は、旅行のための書類や航空券代として4万ドル(約440万円)の支払いを要求する。通常は東欧諸国まで飛行機で向かい、そこから陸路で英国を目指す。

 なかには人身売買業者の犠牲となり、イギリス海峡(English Channel)を渡るころには負債が多額に膨れ上がり、売春宿やネイルサロン、大麻畑などで働かざるを得ない人もいる。

 英全国警察本部長評議会(NPCC)によると、国内の大麻関連犯罪の約12%は東南アジア出身者によるもので、他の欧州域外出身者を上回っている。

 また、国際反奴隷協会(Anti-Slavery International)、NGOエクパット(ECPAT)英国支部、パシフィック・リンクス・ファンデーション(Pacific Links Foundation)の報告書によると、2009年から18年に英国政府によって人身売買の被害者の可能性があるとされたベトナム人は大人と子ども合わせて3100人以上に上るという。

 クオンさんは最終的にロンドンに行き、ドラッグを売ったり、大麻栽培で新人教育をしたりして数年間を過ごした。そして、2013年に大麻吸引の疑いで逮捕された。刑事法院の記録によると、クオンさんは大麻栽培の罪で有罪とされ、禁錮10月を言い渡されている。クオンさんは最終的に内務省から国外追放とされた。

 内務省のデータによると、2014年以降、自らの意思または強制的に帰国したベトナム人は1600人以上に上っており、うち少なくとも22人が14歳未満だった。(c)AFP/Sebastien RICCI