■サッカー界の変化

 そんなベンゲル氏が冷静に距離を置いていたポジションが一つだけある。それはディディエ・デシャン(Didier Deschamps)監督の下で、昨年のW杯ロシア大会(2018 World Cup)を制覇したフランス代表の指揮官だった。

「そのオファーは、何度か断った」「私はクラブを率いる方がいい。代表チームはパートタイムのような仕事で年間10試合ほどだ。私は(年間)60試合に慣れているから、今までその仕事を熱望したことは一度もない」

 また、自宅で過ごしているときは意気消沈の様子で家族を困らせているという話も否定し、「まさか、そんなことはあり得ない」「少しばかり増えた時間や自由を楽しんでいる。朝起きてどこにも行く予定がないのは35年ぶりだった」と述べた。

 その一方でベンゲル氏は、現代サッカーでは厳しいメディアからの視線や攻撃的なオーナーの存在が、指揮官の仕事を著しく不安定にしていると批判し、「私が懐かしいと思えない部分もある」とすると、「試合のたびにあれこれ分析され、結論を決め付けられてしまう。それは前よりもひどくなっている」との認識を示した。

「サッカー界の景色はここ20年で変化している。もっと投資ありきで、計算づくのオーナーばかりになってきた。結局は毎週のように監督を代えたりするのは無理だ」

 今季のプレミアはリバプール(Liverpool FC)が30年ぶりのタイトル獲得を果たすとの予想をほのめかしていたベンゲル氏は、なぜコートのファスナーを上げることが苦手なのかというサッカー界最大のミステリーの一つについても笑いながら説明した。

「私のコートはとても長いし、羽織ったときにはすでに凍えているんだ」「手がすっかりかじかんでいることもある。それに試合に集中していて、ファスナーのことを気にしているわけにはいかないからね。それにしても、私は少しばかり不器用なのかもしれないね」 (c)AFP/Alastair HIMMER