【10月29日 AFP】フランス南西部バイヨンヌ(Bayonne)で28日、84歳の男がモスク(イスラム礼拝所)を襲い、午後の礼拝の準備をしていた70歳代の男性2人に発砲して重傷を負わせる事件があった。男は2015年の地方選挙で、マリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)氏率いる極右政党「国民戦線(FN)」(現「国民連合」=RN)から立候補していた。

 フランスでは今月、イスラム過激思想に傾倒したパリ警視庁職員が同庁で警官ら4人を殺害する事件が発生。政府は今回の発砲の数時間前、イスラム教徒の間にある「分離主義」と闘いを非難していた。政府は新たな事件を受け、イスラム教徒への「連帯」を表明した。

 バイヨンヌのジャンルネ・エチェガライ(Jean-Rene Etchegaray)市長は現場でAFPの取材に応じ、男は「車でモスクに近づき、建物の横の扉に発火装置を投げた」と説明。「男は出てきた男性2人に発砲し、1人が首、1人が胸と腕に銃弾を受けた。その後、男は逃亡した」と語った。

 警察は、被害者は74歳と78歳の男性で、重傷を負って近くの病院に搬送されたと明らかにしている。

 車のナンバープレートから、男がバイヨンヌから16キロメートルの近郊にあるサンマルタンドセニャン(Saint-Martin-de-Seignanx)の住人であることが判明した。サンマルタンドセニャンは人口5000人の町で、フランス側バスク地方の観光地としても知られる。

 捜査筋は、男をクロード・サンケ(Claude Sinke)容疑者と断定。本人も犯行を認めていると明らかにした。同容疑者は発砲の前、モスクの外にあった自動車に放火していた。

 2015年地方選の公式候補者リストによると、サンケ容疑者はこの選挙で国民戦線から立候補していた。

 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は28日夜、ツイッター(Twitter)に「凶悪な攻撃」を「断固非難する」と投稿。クリストフ・カスタネール(Christophe Castaner)内相も「イスラム教徒社会に対する連帯と支援」を表明した。

 またルペン氏も、襲撃は「われわれの運動の価値観と正反対」の行為だと非難。国民連合は、サンケ容疑者とは何か月も接触がなく、同容疑者は「すでにメンバーではない」と説明した。

 マクロン大統領は事件の数時間前、パリ警視庁での事件を受けて、フランスのイスラム教徒らに「分離主義」との闘いを強めるよう呼び掛けていた。(c)AFP