【11月2日 東方新報】スイス金融大手のクレディ・スイス(Credit Suisse)の最新調査で「中国の富裕層の数が、米国の富裕層の数を初めて上回った」と、英通信社ロイター(Reuters)が10月21日に報じた。世界のミリオネア(100万米ドル以上の資産を有する成人)を調査するクレディ・スイスのデータによれば、世界トップ10%の富裕層の中にランクインした中国人は1億人もいて、米国の9900万人を上回ったという。

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 中国の富裕層はどこに住んでいるのか。2019年10月23日時点の為替レート「100万米ドル=1億836万円」、「1000万元=1億5300万円」で、2つの調査データ分析には下限額のずれはあるが、中国人の富裕層の実態が読み取れる。北京、上海、香港という中国の国際的な大都市に富裕層が多く住んでいるという点である。金融誌の胡潤百富(Hurun Report)の調査データ(2018年)によれば、「1000万元(約1億6000万円)資産を持つ世帯数」の1位は北京の29万4000戸、2位には上海が25万4000戸で続き、以下は3位に香港、4位に深セン、5位に広州と続く。

 しかし、ほかの中国メディアでは異なる見解が示されていた。富裕層の出身地はかならずしも国際都市の北京や上海ではなく、地方出身者も多いとしている。捜狐(Sohu)も、愛奇芸(Iqiyi)の記事にも「多くの富裕層が北京、上海、深セン、広州)に住んでいるが、それらの多くが、浙江省(Zhejiang)温州市(Wenzhou)の出身である」とし、「温州は2級都市であるが、1978年の改革開放の直後から多くの商売人を生み出した。靴工場や縫製工場など、できることから始めて、中国各地に移り住み、さまざまな事業に手を出し、北京などの国際的な大都市の不動産にも多額の投資をした」と伝えている。

 つまり、改革開放以降の起業家たちが現代の中国経済を代表する富裕層となっているということだろう。そして、それら起業家の出身地は必ずしも北京や上海でなく、上昇志向を持った地方の人々だともいえる。

 日本の長者番付でも同様に起業家たちが多い傾向がみられる。フォーブスジャパン(Forbes JAPAN)によれば、2019年版の長者番付50人の中には、ユニクロ(Uniqlo)を筆頭に新しい消費者ビジネスを開拓したABCマート(ABC-Mart)、ニトリ(Nitori)、ドン・キホーテ(Don Quijote)、メルカリ(mercari)、しまむら(Shimamura Group)や、ICT産業のSoftbank、光通信(Hikari Tsushin)、サイバーエージェント(Cyberagent)、ミクシィ(mixi Group)、グリー(GREE)など、平成の時代に入ってから勃興した起業の創業者たちの名前が多く並んでいた。

「あらたな起業家が勃興し、国家の経済イノベーションを引き起こす」という視点では、日本と中国は似ているところもあるように見える。しかし、経済成長率で、30年近く6%超を維持する中国と、2%超すら維持できなくなった現在の日本の違いは何であろうか。2010年に日本は中国にGDPが抜かれ、今や2倍以上の差がついている。(c)東方新報/AFPBB News