【10月26日 AFP】米国防総省は25日、総額100億ドル(約1兆円)のクラウドプロジェクトの契約者として、米IT大手マイクロソフト(Microsoft)を選定したと発表した。同社が単独で事業を請け負う。

 このプロジェクトは国防総省の防衛基盤統合事業(Joint Enterprise Defense Infrastructure)で、頭文字を取って「JEDI」(ジェダイ)と呼ばれている。契約期間は10年。人工知能(AI)技術でリアルタイムに解析された情報を一つのクラウド上に統合し、陸海空軍など米国の全軍種で共有することが可能となる。

 国防総省は、マーク・エスパー(Mark Esper)国防長官が就任した1週間後、新長官が契約プロセスを見直す必要があるとして、契約者選定を先送りしていた。

 JEDIの契約者選定では、クラウドコンピューティング分野で支配的な地位を築き、すでに中央情報局(CIA)など米政府機関に秘密情報を扱うサーバーを提供していた米インターネット通販大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)が有利とみられていた。

 エスパー氏を国防長官に指名したドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は、アマゾンや、その創業者で米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)を所有するジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏を激しく非難していた。今年7月にトランプ大統領がJEDIの入札プロセスについて「マイクロソフト、オラクル(Oracle)、IBMといった企業からの不満」を聞いているとして、本腰を入れてプロセスを見直すと述べたことから、選定に不適切な影響があるのではないかとの懸念が出ていた。選定過程でマイクロソフトが優遇されたという批判も出ている。

 この契約をめぐっては、世界をより良くしたいと訴えるインターネット大手各社が防衛産業に関わることの是非も論争を呼んだ。ベゾス氏は、たとえ評判が悪くとも米国の防衛を支えることは重要だと述べ、アマゾンの入札参加を擁護していた。

 グーグル(Google)は、自社の基本方針に合わないとしてこの案件から撤退。マイクロソフトは従業員から撤退を求める声が上がっていたが、最終的にはアマゾンの唯一の競合相手となっていた。(c)AFP/Glenn CHAPMAN