■できるのは自衛だけ、「普段どおりの生活を」

 先週には、今年の夏に何度も大規模デモを主催してきた市民団体「民間人権陣線(Civil Human Rights Front)」のリーダー、岑子傑(ジミー・シャム、Jimmy Sham)氏が暴漢にハンマーで襲われ、血だまりの中に放置される事件が起きた。岑氏が襲われたのはこれが2度目だ。

 一連の襲撃の被害者のうち5人が警察に被害届を出したが、逮捕されたのは岑氏を狙った1度目の襲撃に関与したとされる3人だけ。9月初めに学生の授業ボイコットを組織した後、実家の前で3人の男に襲われ殴られた民主派政党「香港衆志(デモシスト、Demosisto)」の鄭家朗(アイザック・チェン、Isaac Cheng)副主席(19)は、警察が捜査対象を選別していると非難する。

 香港警察は、偏向捜査疑惑を否定し、政治的な思惑がどうあれ全ての犯罪を追及していると反論している。ただ、7月に北西部の元朗(Yuen Long)区の鉄道駅で民主派のデモ参加者らが暴漢に襲われた際には、通報から警察の出動まで40分近くかかり、しかも現場に到着した警官らは棒を手にした襲撃犯らが立ち去るのを放置していたことが映像から判明。警察への信頼はすっかり損なわれてしまった。

 民主派の人々は恐怖におびえながら自衛に努めているが、できることは限られている。区議会選候補者で遊説中に襲撃されたジャネル・レオン(Janelle Leung)さん(25)は、「私にできることといえば、これまでより用心して、ボランティアの人数を増やすくらい。路上で一人にならずに済むようにしている」と話す。

 それでも、被害者たちの多くは脅しに屈していない。先月襲撃を受けた民主派の議員、ロイ・クォン(Roy Kwong)氏は、「襲撃の頻度が増し、もっと深刻な被害が出るのではないかと心配だ。恐怖を克服するには、普段どおりの生活を続け、われわれがおじけづいてなどいないことを黒幕の連中に示すことが大事だ」と語った。(c)AFP/Xinqi SU